050 無くした声


#白#

「クーリスマスが今年もやって来る−……か」
まだちょっと早いけど、せっかくもらえた連休。この機会を逃すまいと準備をする。
持っている中で一番可愛い服を着て、薄くお化粧して、彼が買ってくれた簪をつけた。
「喜んでくれるといいな」

彼が死んで一年。彼と戦った木の葉の忍が彼の死を教えてくれた。私が送った手紙が彼の懐に入っていたらしい。簡単ではあるがお墓も作ってくれた。私は忍ではないけれど、それは普通でないことはわかる。敵だと教わった木の葉の人達も、本当は優しいのかもしれないと思った。彼らがいたから白は死んだ。けれど、彼らがいなければ私はこうして彼の元へ行くことは出来なかったかもしれない。複雑な思いは未だに残っている。

「白、また来たよ」
お墓の周りを整えて、彼に話しかける。
「もうすぐクリスマスだからプレゼント持ってきたの」
気に入ってくれるといいな、と手袋を取り出す。暇な時間を使って作った白い手袋。それを供えて手を合わせると心地の良い空間がそこに広がる。
それからも他愛のない話をした。話す、と言っても当たり前だが私が勝手に話しかけているだけで返事はない。それでも早々に帰る気にはならず、日が暮れてきてやっと帰らないと、と思った。
もう一度目を瞑って手を合わせる。目を開いて白のお墓をもう一度撫でた時、ふと感じた冷たさ。
「雪……」
白と同じ、真っ白な雪。
「白、喜んでくれたのかな」
ふと上を見上げる。静かに降る雪の中に、柔らかい白の笑顔が見えた気がした。

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