001 薬漬け


#マユリ#



ガリッ

甘く不思議な味が口の中に広がる。白くて丸いその錠剤は、形も味もラムネによく似ている。これを噛むとだんだん気分が良くなってとてもハイな状態になる……わけではないが、一種の中毒性はあると思う。
飲み続けて早1ヶ月。これまで一度も欠かしたことはない。飲まなければどんな仕打ちが待っているかわからないのもあるが、それ以上に最近は薬への依存が勝っているのではないかと自分自身感じている。それに一度捨てたこの命。別に死が怖いわけではない。ただ死ぬ前にもう一度、必要としてくれた人のためになにかしようと思った。だから私はここにいる。


白を基調とした、落ち着いたこの部屋の中で生活をする。ただそれだけでも私なんかがあの人達の役にたつならそれでいい。

「おはようございます」
「あ、ネムさん。おはようございます」
「身体に何か変化はありますか?」
「いえ、いつもと変わりません」
ネムさんは私の世話をしてくれる。食事、洗濯、体調管理……ほんとうは全部自分でできるのだけれど、ここでの決まりのようなので全て委ねている。

「それでは、マユリ様がお呼びなのでついてきてください」
「はい、わかりました」通されたのは無機質な小部屋。マユリ様はいつもそこにいる。
「気分はどうかネ?」
「特に代わりはありません」
「そうかい?なら良かったヨ」
私の方を見向きもしない。台の上にある試験管やら薬品やらをしきりに動かしている。その間、ネムさんは仕事に戻り、私は椅子に座っている。

「できた……今度はこれを飲んでみてくれたまえ。他の隊員で実験済みだから死にはしないヨ」
見た目は今までの物と変わらない。でも香りが甘ったるくて酔ってしまいそう……


ガリッ
「…………いちご……おいしい……」
「オマエはいっさい抵抗しないからご褒美ダヨ」




ガリッ
今日も部屋に鳴り響く音。マユリ様は私を殺そうとしない。他の隊員達は一粒飲むだけで苦しみ悶え堕ちていく。
それが何故なのかは知らないし知る必要はない。
ただ私は彼のために尽くすだけ。
今日もまた、小さな粒を口に含む。



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