静かな優越



「私、イヅル君のことが好きなの」

だから応援してと言われてしまえば、いいよと頷くしかなかった。私もなんだ、と言ってしまえばこのような思いはしなくて済んだのだろうか。でも私にそれを告げる勇気はなかった。だから、
「一緒にご飯食べたんだ!!」
そう言ってはしゃぐ彼女を止める術を知らなくて、私は当たり障りのない返事をかえすだけ。
あの時は、きっと2人は付き合うんだろうと、自分に言い聞かせていた。




それなのに、今私の目の前で彼女は泣いている。聞くと、告白する前に振られた、らしい。

「嬉しいからって皆に何でも言っちゃうのが嫌だったんだって……」
「そっか……」
「でもさ、酷くない!?」

泣きわめく彼女は、近くに吉良君が居ることを知っている筈。なんせここは三番隊隊舎の私の席。なのに、最初は小さかった声も次第に興奮してきている。
そういうところが嫌われるんじゃないかと思ったが、正直火に油を注ぐようなことはしたくない。

私に抱きついて泣きじゃくる彼女を宥めながらふと目線をあげると、大量の書類の陰から吉良君が見え隠れしている。いつもより眉が下がっているのはきっと、机の上に積み重ねられたそれのせいだけではないだろう。
彼女には悪いが、私は先程のことを思い出し、目をつむる。



静かな優越

「黒木さん、好きです」
「……冗談とかじゃなくて?」
「本気だよ。院生のときからずっと」
「……私も吉良君が好きだよ」
この会話がほんの1時間前の事だというのは2人だけの秘密





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