「木佐さん、今日一日手を繋いでいてもらえませんか?」



きっかけはそんな甘い一言だった
校了明けで疲れた体を休める為に木佐さんは今日は休みを取っていたのを知っている

残念ながら俺は夕方からバイトだったからギリギリまで木佐さんと家で寝ていようと考えていたと思う

今にも寝てしまいそうな目をしているのを見ながらそっと手を握ってみた


「うわっ木佐さんあったかいですね」


「んー・・・」


「・・・眠いからですかね?」


「んー・・・」



これはもう記憶に残っていないだろうな、とか思いながらそっと柔らかい髪に手を通す


「お休みなさい」


俺の言葉を合図にか、木佐さんの目は完全に閉じられてしまった

本当は久しぶりすぎてずっと話をしていたい
だけどそれが出来ないことだって分かっているのも事実



「木佐さん」



俺、時々思うんです
仕事が忙しいのに重荷になっていないか

学生で仕事経験もバイトのみ
そんな分かっていない自分にはせめて仕事に集中できるように影ながら応援することしか出来ない

そんな俺を
いつまで愛していてくれますか?




「ん・・・」


身をよじって丸くなる
必然と手は木佐さんの丸まった中へと巻き込まれていってしまった
それにしてもよく寝ている






「・・・ゆ・・・」


「・・・?木佐さん?」




小さく何かを呟いていたのを聞くと、ちゃんと聞こうとして口元に耳を寄せた






「・・・こ、う」


「!?・・・え」




名前を、呼んでくれた?

自惚れでもいい、今まで雪名だった呼び方を名前で


思わず勢いづいて抱きしめてしまった



「翔太」



違和感があるけれど、なぜだか温かみを感じた
手から、体全体から伝わる温度に笑みが出る

木佐さんの見ている夢を続きからでいいから見てみたい
もしそこに俺がいるならなおさら

ギュッと抱きしめたらそれが出来てしまいそうで
起きないぐらいに強めた


ずっとこの温度を感じていたい
もし木佐さんが俺を不必要になったとしたら

そんなことはどうでもよくなった
俺がそうならないようにすればいい




「好きです、木佐さん」




終わらない恋になれ
(あれ、雪名?)
(おはようございます)
(おはよう、お前も寝てたのか?)
(木佐さんの寝顔みたらつい)
(っ・・・ばか・・・)