第十話
白石の練習に付き合っていてわかったことがある。
いや、元々わかっていた事だが、
白石は努力家だ。
彼にとって普通の練習量だと言うそれは、俺や他の部員にとっては普通じゃない。
俺は白石を少し舐めて居たかもしれない。
さすが2年生から部長を勤めるだけあるし、
四天宝寺の聖書と言われるのも頷ける。
「もうすっかり暗くなったなあ…、今日はこの辺にしとこうか!」
「うーん、俺はもう少しやっておこうかな…」
はあ!?まだやんの??
「本間に!?じゃあ俺もやる!!」
「ええよ、もう暗いから忍足くんはもう帰り。」
努力家のうえに、優しいときた。
これは女の子が好きになるのも頷ける。
「そういえばいつも思ってたんやけど、
忍足くんって言うのやめん?従兄弟と被って何か嫌やねん。」
「やったらなんて呼べばええ?」
「何でもええよ。こっちは白石って呼んでいい?」
「おん。俺は謙也くんって呼ばせてもらうわ。」
「ほな、練習再開しよか!!」
「え!?……せやなあ、そうしよか。」
呆れたように苦笑する白石。
俺も少し強引だったような気がするよ。
そうしてしばらくの間テニスボールの音が響きわたった。
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