「みどりかわ」

形のいい唇をそろりと撫で、そのまま指で顎に線をひいたあとにふたつの腕で抱き締める。すん、と鼻をすったあとに広がる甘い匂いは、これはたしかショートケーキ。甘ったるいそれは緑川にはピッタリで食べてしまいたい。けれど口を開けようとする寸前でやめた。そんな気分にはなれなかったからだ。

「ヒロト」
「…みどりかわ」
「ねえヒロト。また泣いてるの?」

そういって俺の背中に腕を回してくる、その動作はすごく優しかった。俺が黙っていると、赤子を落ち着かせるときのような、そんな仕草で背中を一定のリズムでやんわりと叩く。それが心地好くて、俺は静かに目をとじた。



凾サの手で僕を殺めて、




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