pksp/シルゴ
※無駄にいちゃいちゃ甘ったるい





この状況はどういうことなんだろうか。目の前にちらつく銀色が目障りで仕方ない。逃げようにも、両手を壁に押さえつけられているからできやしない。ゴールドにできるのはただその銀色を睨むことだけだった。
お互いの息がふれるくらい近くにいることにゴールドは拒むこともできない。銀色の肩から流れる赤い髪が、さらりとゴールドの頬を撫でる。くすぐったくて変な声がでてしまいそうになるのをたえながら、熱い息を吐いた。気がおかしくなってしまいそうだ。銀色が、シルバーがなにか言ったわけでもないのに、その威圧感に呑まれてしまいそうでごくりと唾をのむ。
普段強気なゴールドだけれどこのときばかりは静かだ。それがわかっているのか、シルバーは愉しそうに口角を上げる。そんな憎たらしい顔がかっこよくて様になってる、なんて言えるはずもないゴールドはただただ頬を赤く染めるだけだった。

「…退けよ」
「断る」
「俺様の命令を断る権利なんか、お前にあるはずもないね」
「どの口がそれを言うのだろうな?」

シルバーの鈍く光る眼でそれを言われたら、黙るしかない。自分の方が立場が上だと感じていたゴールドは、結局はシルバーが上になってしまい逆転されてしまう。それがゴールドには苦痛で仕方がなかった。不本意だが、抱かれるときは理性が飛んで素直に喘ぐ自分もいるのだ。理性があるうちは必死に耐えているはずなのに、身体のどこかで受け入れてる自分がいる。それは認めざるを得なかった。

「退けって…シルバー」
「お前のその耳は飾りか?断ると言ったはずだが」
「うるさい、退けよ!」

腕に力をこめて引き剥がそうとするが、思ったより力が強くて剥がせそうにもない。同じ年頃で変わらない身長なのにどこからそんな力があるんだろうか。ゴールドは痛みに顔を歪ませる。気がつけば、シルバーの爪がゴールドの皮膚にくい込んでいた。

「シル…」
「ゴールド」
「んっ」

シルバーの顔が鼻先まで近くなった、と思ったら、ふいに唇に柔らかい感触。合わさった舌は熱いのに、唇はどこか冷たかった。なにかいいかけたゴールドを自分の唇で抑えて黙らせた。シルバーの目も唇と同様、冷めた感じでゴールドは黙ってそれを受け入れた。思えば舌を噛んで止めさせることだってできたはずなのにゴールドはしなかった。
間近で見る銀色が眩しすぎて、ほんのすこし照れ臭くて、ゴールドは瞳を閉じた。壁におさえつけられている状態だからいっそう息苦しくて、空気がほしいがために開いた唇の少しの隙間からまた舌を入れられてゴールドは眉をひそめた。酸欠で死んでしまう。

「んう、」

苦しい、苦しい。止めさせようとしたが両手は押さえつけられて使えない。目で訴えたって気づいてくれるはずがない。
どうしよう。回らない頭で考えていたら唇が離された。絡んでいた舌から引く糸がいやらしくて、でもそれを真っ赤な顔でぼんやり見ていた。酸欠で目の前がちかちかして、仕方なくゴールドはそのままシルバーの肩へ頭を預けた。酸素が急に入ったことにより盛大に噎せてしまった。

「げほっ げほ」
「なんだ、だらしのないやつだな」
「っ黙れ…!」
「そんな顔して言われてもな」

そう憎たらしい台詞を吐きながらもその手はゴールドの腰へ回してくれている。キスで力が入らなくなったゴールドを支えてやっているのだろう、そんなシルバーの不器用な優しさがゴールドは嫌いじゃなかった。それでも好きとは言わない。そんな女々しい台詞は自分には合わないと思ってのことである。

「シルバー…」
「なんだ」
「…しばらく肩、貸しやがれ」
「仕方ないな。貸してやろう」
「素直じゃねえの」
「それはお前だろう」

この憎たらしくて素直じゃないやつのそばがこんなにも安心するなんて。ゴールドはほうっと息をついた。
このときはシルバーに自分の身体を任せてもいいかな、と思うのだ。ほんの、ほんの一瞬だけだけど。俺様なスカしたやつに遊ばれてもいいかな、なんて。

そうしてゴールドが瞬きをすれば、あとから涙がほろりとシルバーの肩に落ちた。