「来週までに進路希望調査表を提出すること、以上だ」

帰りのショートホームルームでそう告げられたのは、今からちょうど一週間と一日前のことだった。
将来について漠然としか考えていなかったタマキは悩んだ末に、最近考えるようになった答えを書いて提出した。
そして今、タマキはキヨタカと机を挟んで向かい合っている。
恋人ではなく、教師と生徒として。

「タマキはA大学に進学希望だな?今のままだと微妙なラインだな」

机に置いた進路希望調査表と手に持った成績表を見比べながらキヨタカが言う。
タマキだってそれくらい分かっている。
しかし適当にそこを選んだ訳ではないのだ。

「A大学に行って、何を勉強したいんだ?」
「・・・教育学部を目指そうと思います」
「タマキは教師になりたいのか?」

先生という仮面をつけたまま、目だけを意味ありげに細めた。
うっすら口元に笑みを浮かべている。
これは意地悪をするときの顔だ。
しかし今はそこを突っ込む訳にもいかない。

「どうして突然教師を目指す気になったんだ?」

突然、をやたら強調したのは気のせいだろうか?
言いたいことは分かっていると言わんばかりなキヨタカの顔が憎い。

「キヨタカ先生に憧れて・・・」
「聞こえないな」
「だから先生に憧れて、・・・教師を目指そうと思いました」

そうか、と含み笑いをするキヨタカはもうほとんど恋人の顔だ。
顔が熱くなってきて膝の上で拳を握り締めて俯く。
本当は一緒にいたいから、なんてきっと言わなくたって分かっているだろう。

「タマキはいい先生になれるだろうな」
「ありがとうございます」
「同じ学校で働けることを期待しているぞ」

突然優しい声音になったキヨタカに顔を上げると、やっぱり全部お見通しだ。
いかにも励ますように核心をついてくる。

「・・・頑張ります」
「俺も出来る限り協力しよう」

キヨタカのその一言で二者面談は終了となった。
俺も期待しているってことは、一緒の気持ちなのかな?
出来る限り協力しようってことは、個人的に勉強を教えてくれたりするのかな?
今まで漠然としか見えなかった未来が、今くっきりと見え始めた。
そのためには、もっと勉強を頑張らなければ。
教師兼恋人のためにも、タマキは早足で家に向かった。

進路希望調査
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