「隊長、今日二人で少し飲みませんか?」
「タマキから誘ってくれるなんて珍しいな」

こうして二人でバンプアップのカウンターに並んでいるのだが、どうもタマキの様子がおかしい。
カランとタマキの手の中で音を立てているのはウィスキーのロックだ。
いつもカクテルばかり飲んでいるのに。
不思議に思いながら懐から煙草を取り出すと、タマキがじっとこちらを見ている。

「どうした?」
「俺にも吸わせて下さい」

そう言って手を差し出してきたタマキに困惑した。
タマキが煙草を吸ってる姿なんて今まで一度も見たことがない。
赤らんだ頬を酔っていると判断してタマキの手に自分の手を重ねた。

「こんなもの吸わない方がいい」
「どうしてですか?」

いつもは聞き分けのいいタマキが、酔っているせいかむぅっと頬を膨らせごねている。
仕方がないのであやすように髪を撫でたらぱちんと手を払われてしまった。

「俺は子供じゃありません!」

突然大声を上げたタマキに驚いてしまった。
目を瞬かせていると、強い力で肩を掴まれ勢い任せに唇を奪われた。
タマキらしくない行動に何も言葉が出て来ない。

「大人の男なんですから、俺だってこれくらい出来ます!」

何となくタマキが言いたいことがわかってきた。
年下なせいでつい可愛がってしまうのがどうやら不満らしい。
だから普段飲まない酒を飲んだり、煙草を吸おうとしたのか。
タマキの言いたいことがわかって、混乱した頭が徐々に落ち着きを取り戻してきた。
大人の男らしく余裕の笑みを浮かべてタマキに言った。

「ならその"大人なところ"を家で見せてもらおうか」

意図することがわかったのか、恥ずかしさにみるみる顔を赤く染めるタマキにニヤリと微笑む。
二人分の代金を支払って席を立った。

「今夜は楽しみだ」

真っ赤になって腰を抱かれているタマキに聞こえないように小さく呟いた。

すこし、背伸びをしてみました
(そんなところも可愛いんだけど)
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