ぶっきらぼうだけど優しくて、不器用だけど頑張り屋。 一緒にいると安心して、いつの間にか出来るならずっと一緒にいたいと思うようになっていた。 そんなある日、二人でバンプアップで飲んでいるときだった。 仕事とワゴン車の往復のような生活のカゲミツが思いを寄せている人がいるのか気になった。 何となく聞いた質問にカゲミツは驚いたような顔をしてから、 ふっと表情を緩めた。 「俺はいるよ、好きな奴」 その人を思い浮かべているのか柔らかい表情を浮かべている。 カゲミツをそんな顔にさせるのはどんな人なんだろうと気になった。 ワゴン車に篭りがちだから、そんな人いないと思っていた。 タマキが何も言えずにいるとカゲミツが苦笑しながら話を続けた。 「見込みないけどやっぱ好きで」 「そうなんだ・・・」 カゲミツがちらっとこっちを見た気がしたけど俯いていたのでどうだかわからない。 唐突に話を始めてしまったから会話の続きなんて考えていなかった。 数秒の沈黙に耐え切れなくなってタマキが躊躇いがちに口を開いた。 「俺もいるんだ、好きな人」 「え・・・・・・そうなんだ・・・」 苦し紛れに出た一言はタマキからすれば告白同然だけど、カゲミツは心底意外そうな顔をした。 それから一度大きく息を吐いてグラスの中身を一気に飲み干した。 もう一度吐き出された息はやっぱり重い。 「まぁ俺も見込みなんてほとんどないんだけど」 「お互い大変な相手を好きになっちまったな」 いつの間にか柔らかい表情は消えていてタマキが目を瞬かせる。 見込みのない恋のことを考えたせいか、カゲミツは辛そうな表情をしている。 「お前もがんばれよ」 「あぁ、お前もな」 楽しいはずの酒の席がしんみりしてしまった。 タマキが何か話題はないかと考えを巡らせていると、カゲミツがぽつりと呟いた。 「鈍感って、罪だよな・・・・・・」 「本当にな」 お前が言うなよと言いたい衝動をぐっと堪える。 俺の気持ちなんかちっとも気付いてないくせに。 タマキが小さくため息をつくと、カゲミツがバンとカウンターを叩いて立ち上がった。 あまりの勢いに驚いてカゲミツを見上げる。 「俺、明日告白する」 ダメかもしんねぇけど言わずに終わるよりかはいい。 そう言ったカゲミツの横顔は普段あまり見ない男らしさがあった。 辛い気持ちを隠してタマキは精一杯に笑う。 「もしダメだったら一緒に朝まで飲んでやるよ」 「・・・ありがとう」 驚いた顔をしたあと、切なげに目を細めた意味をこのときはまだ知らなかった。 片思い終了宣言 (24時間後、違う意味で泣くなんて!) by確かに恋だった様(心に刺さる彼のセリフ) back |