!DC2エンド後
トキオがリーダーをやめ、タマキがリーダーという設定です

ナイツオブラウンドが崩壊して三ヶ月の月日が経った。
警察組織が受けた被害は大きくJ部隊の隊長であるキヨタカは忙しく動き回っていた。


「タマキ、ここ違うんじゃない?」
「え、・・・あ、本当だ」

すまないと謝ってオミから指摘された書類を受け取る。
はぁ、と小さくため息をついてちらり見遣ってもその席には誰もいない。
その席の主のキヨタカは遠出の仕事があると行ってしまったのだから。
隊長のキヨタカがいない間、リーダーであるタマキが部隊をまとめなければならないのだがなかなか上手くいかない。
頑張らなければと思えば思うほど空回ってしまうのだ。
あんまり頑張り過ぎるなとカゲミツは言うけれどそういう訳にはいかない。
近頃疲労の色が濃い上司兼恋人の負担を軽減したいのだ。
タマキは頬をぺちぺちと叩いてもう一度机に向き直った。
キヨタカが帰って来るまでにこの仕事を完璧に終わらせよう、そう心に決めた。

「タマキ、まだ帰んねぇのか?」
「これが終わったら・・・」
「あんまり根を詰めるなよ」

心配そうなカゲミツに大丈夫だと手を振って背中を見送る。
明日にはキヨタカが帰って来るのだ、それまでに仕事はしっかり終わらせたい。
ちらりと時計を確認すると時刻は18時過ぎだ。
まだ時間はあるとタマキはキーボードを叩いた。


「タマキ、起きろ」

聞き覚えのある耳障りのいい声がして、体がゆらゆらと揺すられた。
ぼんやりしたまま頭を上げるとそこには苦笑を浮かべたキヨタカが立っていて、瞬きを繰り返す。

「隊長・・・?」
「早く終わったから早めに帰って来たんだ」

キヨタカの言葉がタマキの中にすとんと落ちる。
そこで漸く自分の状況を理解した。

「あ、俺・・・、」
「帰って来たのに挨拶もなしか?」
「・・・おかえり、なさい」

ただいまと言う顔は優しくて久々に見た恋人の笑顔に、何だか恥ずかしくなってタマキは顔を俯けた。
しかしそれどころではないことに気が付いた。
まだやらなければいけない仕事が残っているのだ。
ハッと顔を上げるとキヨタカがニヤニヤと笑っている。
この顔は何か意地悪なことを言うときによくする顔だ。

「随分遅くまで頑張ってたんだな」
「隊長がいない分の仕事をしようと思っただけです」
「これはやらなくてもいいと言っただろ?」
「出来ることは全部やろうと思って・・・」

キヨタカに隠れて全部終わらせようとしていたのに作戦は失敗だ。
作成中の資料に目を通すキヨタカの横顔を見ながら、こっそりため息をついた。
リーダーとしても恋人としても力になりたかった。
しょんぼりと落とした肩にキヨタカが優しく触れた。

「よく頑張ったな」
「・・・ハイ」
「今日はもう遅いから帰ろうか」

こくんと頷いたタマキにキヨタカが席を立つように促す。
恋人との久し振りの再会だというのに気分が浮かない。
無言で駐車場まで行き車の助手席に乗り込んだ。

「元気がないな」

俺がいなくて寂しかったのかという冗談にも返事が出来ない。
タマキはキヨタカのいなかった間のことを思い返していた。
下を向いて黙ったままのタマキの頭にキヨタカの手が触れる。

「どうしたんだ?」
「・・・俺、何も出来ませんでした」
「そんなことはないぞ」

顔を上げると柔らかく微笑むキヨタカがいて目を伏せた。
こんな格好悪いところ見せるつもりじゃなかったのに。
疲れているであろう恋人に迷惑を掛けたくないのに、言葉が溢れ出てしまう。

「やる気ばっかりが空回ってみんなにも迷惑掛けて・・・」

情けなくて涙がこぼれそうだ。
タマキがそう思ったとき、急に肩を引き寄せられた。
もう片方の腕が顔を覆うように回される。

「タマキは俺がいないとダメだな」
「・・・・・・」
「そうやってすぐに自信をなくす」

頭のすぐ近くで聞こえる声は呆れているというよりも笑っているようで。
黙ってキヨタカの言葉を聞いていると顔を覆っていた手が離れ、頬に触れた。
親指でこぼれた涙をすくい目をじっと見つめられる。

「俺が選んだんだからもっと自信を持て」

キヨタカの一言はどうしてこんなに力があるのだろうか。
心の中に広がっていたもやもやがすぅーっと晴れるのがわかった。
わかったか?と言われてこくんと頷いた。

「わかればいい」

そう言って車を発進させたキヨタカと距離を少し詰める。
ふわりと漂った香水に嬉しくなってタマキは目を閉じた。

魔法のコトバ
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