「あ、コーヒーがもうないな」
「じゃあタマキちゃん、一緒に買いに行こう!」

そうしてアラタと二人で買い出しに来た帰り道。
天気がいいからと公園を歩いていると前から白い大型犬がやってきた。
隣にいたアラタが嬉しそうに犬に駆け寄る。

「タマキちゃん、見て!可愛い!」

大はしゃぎでじゃれ合うアラタに年相応な部分もあるんだなと微笑ましい気持ちになる。
しばらく近くでその様子を眺めているとアラタが口を開いた。

「さっきから思ってたんだけどカゲミツ君に似てない?」
「・・・そう言われればそうかも」

遊んでもらって嬉しいのかわんわんと尻尾を振る顔は喜んでいるときのカゲミツみたいだ。
こちらから食事に誘った時の嬉しそうな顔を思い浮かべる。
確かにそっくりだ。
するとなんだかカゲミツに見えてきて優しく毛を撫でる。
そうすると犬が嬉しそうになくので、こちらまで嬉しくなってきた。

「今絶対カゲミツ君のこと考えてたでしょ?」

しばらく犬に触れているとアラタが面白くなさそうに言った。
気付けばアラタはもう犬から離れてこっちを見ている。

「そ、そんな訳!」
「タマキちゃんも嘘つくの苦手だよね」

アラタはそう言うと犬にばいばいと手を振った。
タマキも立ち上がり飼い主に軽くお辞儀をして見送る。
そうして再び並んで歩き始めたとき、アラタがまた口を開いた。

「カゲミツ君ばっかりかと思ってたけどタマキちゃんも大概だね」
「どういうことだ?」
「タマキちゃんもカゲミツ君が大好きだってこと!」
「・・・え?」

立ち止まったタマキをよそにアラタがバンプアップに向かって駆け出した。
(あの写メ、見せたくなかったけどカゲミツ君にも送ってあげよう)



数時間後、仕事が終わった二人はタマキの家にいた。

「タマキ、これなんだけど・・・」
「何?ってなんでカゲミツが?」

カゲミツが差し出した携帯の画面には自分と昼間の犬がじゃれ合う写真がついていてタマキが驚いた。
ぽりぽりと頬をかくカゲミツがもごもごと何かを言い淀んでいる。

「なんだよカゲミツ」
「なんで犬にこんな笑顔なんだよ」

どうやら犬にまで嫉妬したらしい。
少し恥ずかしいけど本当のことを教えてやらなければ。

「カゲミツにそっくりだからつい可愛く思えちゃって」
「・・・え?」

一瞬驚いてから嬉しそうに笑ったカゲミツはやっぱりさっきの犬みたいだ。
しかしさっきは違い、押し倒されて落とされた唇にタマキは静かに瞳を閉じた。
わんこと君
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