「あんな奴待たずにさっさと帰ろうぜ!」

そう声を掛けてくれるカゲミツに曖昧に笑って軽く首を振った。
そうかとしょんぼりと帰った背中を見送り、腕時計に視線を落とすと時刻は夕方5時23分。
あんな奴呼ばわりされているキヨタカは上層部のところへ行ったっきりまだ戻って来ていない。
最近上層部からの呼び出しが多く、二人の時間がほとんど取れない。
時間が取れたと思ってもキヨタカの疲れきった表情を見ると何も出来なくなってしまう。
少しくらいなら我慢出来るが、それが続くとさすがに辛い。
だからこの状況を打開すべく、自分から行動してみることにしたのだ。


「タマキ、まだいたのか?」

体を揺すられてゆっくり目を開けると困ったように笑うキヨタカがいた。
帰りを待っているうちに眠ってしまっていたらしい。
うーんと体を伸ばすとキヨタカがおかしそうに笑った。
寝癖のついてしまった黒い髪をそっと優しい手つきで撫でる。
ふと時間を確認すると、もう8時半を過ぎていた。

「今戻ったんですか?」
「あぁ、あれだけ派手にやられたから立て直すのも一苦労だな」

笑っているがどう見ても疲れているように見える。
あまり負担を掛けたくないが、少しだけワガママを言わせて欲しい。
座ったままキヨタカの腰に腕を回す。
そのまま腹のあたりに顔を寄せてぴとっとくっつく。
久し振りに感じるキヨタカの体温に心が安らぐ。

「隊長、今日泊まってもいいですか?」
「元々俺はそのつもりだったぞ」

そう言って肩を押され体を離された。
もっとくっついていたかったのにと上目遣いで見つめるとキヨタカがフッと口元を緩めた。

「俺を誘ったんだから、どうなるか分かってるな?」

ニヤリと歪んだ口に期待してしまう。
早く家に帰ろうと立ち上がったタマキの腰に素早く腕が回された。
顎を持ち上げる手つきがいやらしい。

「隊長・・・?」
「今は隊長じゃない」
「でもここ職、場・・・ンッ」

もう解散したとはいえここは職場だ。
誰が来るかわからないこんなところで及ぶのはまずい。
頭では理解しているが、久し振りの刺激に流されそうだ。
体がもっともっとと求めてしまう。

「家まで、待って・・・」
「待てない」

キスの間にほんの少し残っていた理性で抵抗するも聞く耳を持ってくれない。
壁に手をつかされて後ろからキヨタカがかぶさってきた。
耳や首筋を舐められて漏れそうな声を必死で抑える。

「タマキ、これをくわえろ」

そう言って持ち上げられたネクタイを軽く噛んだ。
さっきまで残っていた理性なんて、もうどこかにいってしまっていた。
シャツの前を開いてキヨタカの手がタマキの肌を撫で回す。
手袋をしたままのせいでいつもと違う感覚に背中ぞわぞわする。
胸の突起をぐりぐりと押し潰されて思わず声を上げてしまう。

「今日はいつもにも増して感度がいいな」
「なんか、変っ、・・・ア、ン」

片手で器用にベルトを外し、その間も胸への愛撫は止まることはない。
噛んでいたはずのネクタイはだらりとタマキの首にぶら下がっている。
ぷっくりと膨らんだそこを摘まんで低い声で気持ちいいかと聞くなんて反則だ。
必死に頷いて襲い掛かる快感に耐えていると、下着の中にキヨタカの手が忍び込んできた。
柔らかく揉むその手は手袋をしていて堪らない。
身をよじるとキヨタカの熱いものが当たって恥ずかしくなった。

「手袋が、汚れ、んっ」
「また新しいのを買えばいい」

下着からタマキのものを取り出し、扱こうとするキヨタカの手に自分の手を重ねて止めさせる。
チラリ、懇願するように見上げてもキヨタカは柔らかく微笑むだけだ。
わかっているくせに、どうした?と白々しく聞いてくる顔が憎いけど恰好いい。

「キヨタカの、手がいい・・・」
「本当、誘い上手になったな」

言わせたくせにと睨むとキヨタカは笑って手を差し出した。

「手袋を脱がせてくれないか?」

綺麗な笑顔でタマキの唇をなぞる。
キヨタカの意図することがわかり、手袋をゆっくり口に入れると止まっていた愛撫が再開された。
耳に息を吹き掛け、脇腹をつーっとなぞる。
キヨタカの手袋を早く脱がせたいのに、感じることでいっぱいになってしまう。

「タマキ、早く脱がせてくれないか」
「わかってま、す」

キヨタカの指を噛まないように気をつけながら手袋を引っ張る。
しかしその度に感じるポイントを刺激されて思うように進まない。
漸く片手を脱がし終えるとキヨタカが頭を撫でた。

「いじめて悪かったな」

そう言うと軽く自分で指先を噛んでするりと手袋を脱いだ。
色気のある仕草にもう十分熱い身体が温度を増した。
タマキのスラックスと下着を膝あたりまで下ろして大きくなったそれを直に触れる。
それだけで吐息を漏らしたタマキの耳元でキヨタカが囁いた。

「あんまり色っぽい声を出すな」
「だって、久しぶり、ですし・・・あっ、」

柔らかい肌をなぞりながら割れ目に指を埋める。
前を扱きながら後ろを慣らしていく。
敏感に反応を示し大きく息をしながら喘ぐタマキにキヨタカの余裕がなくなっていく。
壁に手をついて無意識に腰を揺らしている姿はこの上なく煽情的だ。
タマキにもう一度ネクタイを噛ませ、指をくぷりと引き抜いた。
急いでスラックスの前だけ寛げて熱い自身を取り出す。
立っているのも辛そうなタマキの腰を支えてゆっくりとキヨタカが中に入っていく。
それだけで甘い声を出して締めつけてくるタマキの耳の裏にキスを落として律動を開始させた。
自ら感じるポイントにキヨタカを誘いタマキも腰を揺らす。
前も刺激され気持ち良くて頭がどうにかなりそうだ。
それまでいいところを少しずらしていたキヨタカが、一番奥を何度も突き上げ始めた。
何も考えられない頭でただ快楽を求める。
力強く突き上げられて、タマキは熱を吐き出した。


「もうミーティングルームでするのは禁止です」
「気持ちよさそうだったのに残念だな」

キヨタカの家へ向かう車の中、タマキがむーっと頬を膨らませた。
誰も来なかったからまだよかったものの、職場で行為に及んでしまうなんて。
思い出しただけで顔が熱くなってしまう。
そう言えば、キヨタカもいつもより大きかったなと考えて慌てて首を振る。
それをわかっているのか、キヨタカはニヤリと口元を歪めた。

「ミーティングルーム以外は構わないんだな?」
「な、何言ってるんですか!」
「さ、着いたぞ」

そう言って先に出るようにと促される。
たまには脱がさずにやるのもいいもんだなという言葉はタマキに耳に届かなかった。
wait!
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