ある日の休日、タマキはキヨタカと二人で昼下がりの公園を歩いていた。
恋人だとおおっぴらには言えない関係。
それでもたまには恋人らしく出掛けようというキヨタカの提案だ。
夕食の買い出しを兼ねていたがそれでも十分幸せだ。
おおっぴらに出来ない関係だからデートらしいデートもしたことがない。
だからささやかながらこうやってデートみたいなことが出来るのも嬉しいし、何より自分のことを考えてくれていることが嬉しかった。
普段は俺様でこっちの話なんて聞かないくせに、たまにこういう見せる優しさにときめいてしまう。
幸せだなと思ってチラリとキヨタカを見ると優しく微笑まれた。
なんだか急に恥ずかしくなってタマキは顔を俯かせた。

二人で他愛もない話をしながら歩いていると、前から犬が元気に走ってきた。
タマキの足に顔を擦り寄せワンワンと吠える犬の頭を優しく撫でる。
尻尾をぶんぶん振る姿が可愛くて抱き上げるとベロベロと顔を嘗められた。

「くすぐったいよ」
「すみませんねぇ」

遅れてやってきた飼い主と軽く話ながらその間も犬と戯れる。

「あはは、可愛いなぁ。ねぇ、隊長?」
「あ、あぁ・・・そうだな」

先程から一歩距離を置いたところで眺めるだけのキヨタカに抱き上げた犬を見せる。
しかしキヨタカは不自然な笑顔を見せるだけだ。
犬を抱かせようとしても受け取ろうとしないので諦めて飼い主に返した。
反対側に歩いて行ったのを見送ってタマキは口を開いた。

「隊長、もしかして犬嫌いですか?」
「そんな訳ないだろう」

余裕の表情を装っているが内心は焦っているように見えた。
昔はわからなかったけど今は違う。

「じゃあさっきの犬抱かせてもらいましょう」

可愛かったでしょ?と上目遣いで見つめる。
ぐっと言葉に詰まったキヨタカにニヤリと笑ってしまう。
もしかして完全無欠だと思っていた恋人の意外な弱点発見?

「ねぇ、隊長、」
「年上をからかうんじゃない」

これは都合が悪くなるとよく言う言葉だ。
むっと子供みたいに素直に表情を出すキヨタカに吹き出してしまった。
あまりやり過ぎると機嫌を損ねてしまうのでそろそろやめなければ。

「でも安心しました。隊長にも苦手なものはあるんですね」
「誰も苦手だなんて言ってないだろう?」

この期に及んで見栄を張ろうとするキヨタカにバレないようにクスリと笑う。
仕事中、仕事仲間には絶対見せないような表情だ。
そこもまた素敵だなんて絶対言えないけど。

「タマキ、今笑っただろ?」
「笑ってません」

すると突然肩に腕が回された。
人前で何を、と思ったけど友人のじゃれあいぐらいにしか見えないだろう。
素早く口を耳元に寄せて低い声でキヨタカが囁く。

「うちに帰ったらしっかり消毒しないとな」

俺以外禁止だと言われ、肩を離される。
赤くなっているであろう顔が熱い。

「早く、行きましょう」
「そうだな」

結局キヨタカに弄ばれているんだけど、それも悪くないなと思いながらまた歩き出した。
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