Trick or Treat?

「カゲミツ!トリックオアト、」
「ハッピーハロウィン、はい、やるよ」
「・・・つまんないの」

10月に入りヒサヤから常にお菓子を持つようにと注意されたけどこういうことだったのか。
不満そうなオミにガムを押し付けて追い払うと自分もひとつ口に入れる。
うん、すっきり。
あいつもこれ食って頭すっきりさせればいいのにガムをポケットにしまうところを目撃した。
いっつもくれと言うくせに食ってるとこ見たことねぇな。
そんなことを考えているとキヨタカが入って来て思考が遮られた。

それはそんなやり取りを始めて数日後のことだった。
いつも一緒に寝ようと言ってくるくせに今日に限って何も言って来ないオミに訝しい気持ちを覚えながらも一人ベッドに入る。
久し振りに広々と体を伸ばして眠れる。
夢見心地でうとうととまどろみ始めたとき、ドアがそろりと開けられてシーツをかぶったオミが部屋に入ってきた。

「カゲミツ、寝ちゃった?」
「ん、・・・なんだよ」
「トリックオアトリート?」
「は?何言ってんだ・・・?」

お菓子くれないとイタズラするよと耳元で低い声で囁かれてぶるりと震える。
お菓子、とサイドテーブルをがさごそと探る手をオミに掴まれた。
追い払おうとしたけれど眠りかけたぼんやりした頭はうまく働かない。
そのままオミが上に覆い被さってきたけれどされるがままになってしまう。
優しく顎を持ち上げられゆっくりと唇を重ねられても抵抗することが出来なかった。

「これからお菓子はいいから、カゲミツが欲しいな」
「・・・バカ、じゃねーの」


オミに散々イタズラされぐったりとした倦怠感の中気になっていたことをオミに訊ねた。

「お前、俺が渡したお菓子食ってないだろ」
「あれ、バレてたの?」

シーツの上でごろごろと転がるオミが驚いた顔をした。
なんでと言いたげな表情で見ると照れくさそうに枕に顔を埋めた。

「だってカゲミツが俺の為に用意してくれたんだろ?」
「あぁ」
「そんなの勿体無くて食べれないよ」
「お前本当バカだな」

それくらいいくらでも用意してやるよと言うとオミが嬉しそうに笑った。

*

「カゲミツ、トリックオアトリート?」
「ハッピーハロウィン、もういい加減いいだろ」
「今月いっぱいは続けるよ」

今日は飴玉を手渡すとオミがその場で食べ始めた。
甘いと声を漏らすオミに自分も飴玉をひとつ口の中に入れた。

「たまにはこの前みたいにカゲミツにイタズラした、痛っ!」
「黙れ変態」

あー、今月終わるまでは全く気が抜けないな。
叩かれたところを痛そうに押さえるオミを見ながらそんなことを思った。
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