最近、タマキがやっと甘えてくれるようになってきた。
ずっと弟感覚で付き合い始めても甘えようとしてこなかったのに。
ようやく素直になってきたなと思っていた、そんなある日のことだった。

季節の変わり目に服を買いたいという理由でアラタはタマキをデートに連れ出していた。
いつ来てもシンジュクは人が多い。一瞬でも目を離したらすぐにはぐれてしまいそうだ。
足早に通り過ぎて行く人を横目にそんなことを思いながら駅前にある信号を歩く。
そんなときだった。
服の裾を緩い力で引っ張られる感覚がして横を向いた。

「タマキちゃん、どうしたの?」

自分より低い位置にある顔を覗き込むように尋ねるとタマキが俯いた。

「アラタが迷子になりそうだから持ってるだけだ」
「そう?でもタマキちゃん、耳が赤いよ」

しかしぎゅっと握った指先とちらりと黒髪が覗く耳を見たらそれが照れ隠しだってすぐにわかる。
クスッと笑ってタマキの指を優しくほどいた。
なんで?と言いたげに揺れる瞳がとても可愛い。

「アラタ?」
「どうせならこっちがいいな」

そう言ってそっと自分の右手とタマキの左手を繋ぐ。
さすがに恋人つなぎは出来ないけど。

「見られたらどうするんだ!」
「こんなに人がいるんだし、誰も見てないよ」

それに見られても兄弟くらいにしか見られないよとアラタがニッコリと微笑む。
事実、周りを歩く人は自分の行く方向しか見ていない。
本当に小さくだけど頷いたタマキを見えた。
言葉は変わらないけど、昔とは違う低い声で耳打ちした。

「タマキちゃん大好き」
「・・・ずるいんだよ」

顔をむっとさせて、それでも手にぎゅっと力を込めたタマキに苦笑いする。
しばらくそのまま歩いていると、タマキが口を開いた。

「オムライス食べに行かないか?」
「タマキちゃんが行きたいならいいよ」
「あと・・・、」
「なに?」
「早く買い物終わらせて家でゆっくりしたい」

照れているのか痛いくらい力を込められた指先が愛しい。

「わかった、早くイチャイチャしようね」

アラタはそう言って歩くスピードを上げる。
何言ってるんだと慌てるタマキの手を強く引っ張った。

more sweet!

thank you 10000hits!企画
しじみ様(自分から甘えられるようになったけどちょっと悔しいタマキとそれが嬉しくて仕方なくて思いっきり甘やかすアラタ)
リクエストありがとうございました!
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