仕事から帰って来て、誰かが家にいることはとても幸せだと思う。
玄関のドアをガチャリと開け、ただいまと声を掛けながら靴を脱ぐとキッチンからカゲミツが顔を覗かせた。

「おかえり、飯もうちょっとで出来るから」

それだけ言ってまた引っ込んだカゲミツを追ってキッチンに入る。
エプロン姿でキッチンに立つのも見慣れたものなのに、なぜだか今日は無性に幸せだ。

「何ニヤニヤ笑ってんだよ」
「いや、幸せだなと思ってさ」

何言ってんだと顔を背けたカゲミツの耳が赤い。
抱き締めたい気持ちをを我慢して、そっと近付いて頬にキスをひとつするだけに留める。
何するんだと振り返ったカゲミツに笑顔で手を振りキッチンを出た。
見たところまだすべて出来上がるまでに20分は掛かりそうだ。
とりあえず先にシャワーだけでも浴びてこようかとトキオはバスルームへ向かった。


「カゲミツ、料理上手くなったよな」
「トキオと暮らしてたらちょっとくらい上達するよ」

お互い向かい合ってカゲミツの作ってくれた食事を口に運ぶ。
今日のメニューは明太子のパスタにサラダだ。
付き合い始めた頃、包丁の持ち方すら怪しかったカゲミツがここまで出来るようになるなんて。
一緒に過ごした時間がはっきりと実感できて嬉しくなってしまう。

二人で夕食の片付けをして、大きなソファーに二人で並んで座る。
BGM代わりに流すテレビには目もくれず一日を振り返りながら晩酌するのも毎日のことだ。

「またレイとアラタが言い争ってたんだよ」
「あの二人は全然変わらないな」
「そうだな」

二人で笑ってグラスに口をつける。
突然、この瞬間がたまらなく愛しくなってカゲミツの腰を引き寄せた。

「トキオ?」
「いや、今日はなんかすごい幸せだなと思って」
「お前さっきからそればっかりだな」

怒るかと思ったけれど腕の中で大人しくしているカゲミツの髪にキスを落とす。
じっと顔を見上げるカゲミツが可愛くてトキオがへらりと笑った。

「お前と暮らし始めてもう三年も経ったんだよなぁ」
「だからどうしたんだよ」
「こうやってさ、一緒に過ごした時間を振り返れるのがすげー幸せだなって思うんだよ」

グラスを置いてカゲミツと向き合う。
恥ずかしさに耐え切れなくなったカゲミツが顔を俯かせた。
その顔を両手で包み込み、自分と目線を合わせさせる。
いつまで経っても変わらない反応に笑みがこぼれてしまう。

「これからもずっと一緒にいような」
「・・・当たり前だろ」

もうお前以外の飯が食えないと呟くカゲミツの口を塞いだ。
遠まわしな表現だけど、確実に愛されているのだと実感する。
驚いて一瞬見開かれた瞳がゆっくりと閉じられるのを確認してそのままソファーに押し倒した。
背中に回された手をイエスの合図だと受け取り、さらにキスを深くした。

これからもずっと

thank you 10000hits!企画
てぃも様(同棲ネタの続きなトキカゲ)
リクエストありがとうございました!
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