!DC2END後、バンプアップの上で同棲中という設定です

「別にオミなんて好きじゃねぇし」

からかわれてムキになって言ってから後悔したって後の祭りだ。
ドアを開いたところで一瞬見開いてから悲しそうに目を伏せるオミの姿が目に入った。
からかってたはずのヒカルがしまったという顔をしている。
オミ、呼び掛ける前に閉まったドアにカゲミツの声は遮られてしまった。

「やばいな」

オミの悲しそうな顔を思い出してカゲミツが頭を抱える。
好きなら言葉で伝えて、態度で示してと言われたのはつい先日のことだ。
いくら俺でも少しは傷付くんだよとも言っていた。
少しは素直にならなければ、そう思っていた矢先にこれだ。
オミと付き合い始めて一ヶ月。
あんな顔を見るのは初めてだった。

気まずい気持ちを抱えながら帰宅しても、いつもみたいな明るい声は聞こえない。
ただいまと声を掛けても返事はない。
カタカタとキーボードを叩く音だけが部屋の中に響いている。

「オミ、そのさっきは、」
「カゲミツは俺なんて好きじゃないでしょ?」

だったら構わないでとノートパソコンをばたんと閉じて立ち上がる。
そしてそのまま足早に自分の部屋に入ってしまった。
中からカチャリと鍵を閉める音が聞こえてふーっとため息をひとつ。
すり抜けるときに見たオミの横顔は完全に怒っている表情でどうしたものかと頭を抱えてしまう。
何か話そうにも聞いてくれる雰囲気はない。
そういえば自分もオミに対してこんなことをしたなぁとふと思い出した。
あのときオミはこんな気持ちだったのかと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
しかし解決策は見出だせず、とりあえず今日はこのまま放っておこう。
明日になればオミの機嫌も直るかもしれないし。
そう考えてリビングに向かった。

一人だとろくに夕食を取る気にもならない。
ガサゴソと棚を探して最近食べていなかったインスタントラーメンを取り出す。
いつもくだらないと思っていた話がいかに大切かということが身に染みてわかった。
一人で食事することがこんなにも寂しいなんてすっかり忘れてしまっていた。
風呂に入り、久し振りに自分のベッドの上に横になる。
恋人なんだから言われと最近ずっとオミと寝ていたせいで、一人用のベッドなのにやけに広く感じてしまう。
いつも繋がれる指先の置場がわからなくてシーツをギュッと握った。
いつも当然のように隣にいて、実際好きなのかどうかもよくわからなかった。
でも今やっとオミのことが好きなんだと実感が湧いた。
明日朝会ったら一番に謝ろう。それから、ちゃんと気持ちを伝える努力をしよう。
そう心に決めて眠りついた。

翌朝、目覚めてリビングに行くとオミが一人で朝食を取っていた。
遠慮がちにおはようと言っても返事はない。
残念ながら機嫌は直っていないようだった。
向かい合って話すために正面に座るとオミが食器を持って立ち上がった。
歩き出しそうな腕を掴んで無理矢理立ち止まらせると不機嫌そうなオミと目が合った。

「何?」
「昨日は悪かった」
「好きじゃないなら無理に謝らなくていいよ」

オミの言葉の端々に棘を感じる。
それでもちゃんと伝えなければならないんだ。

「俺はちゃんとお前が好きだ」
「ちゃんとって、何?」

即座に切り返されて思わず口ごもってしまう。
好きだとさえ言えればオミは機嫌を直してくれると信じ込んでいた。
言えない訳?とオミがイライラした口調で急かせてくる。
口で言っても伝わらないならば行動に出るしかない。
掴んだ腕を一瞬離して指を絡める。
普段は絶対自分からしなかった行動にオミが振り返った。

「・・・カゲミツ?」

呼び掛ける声も無視してオミの胸にぽすっと飛び込んだ。
片方の手は指を絡めたまま、もう片方の手でオミのシャツをぎゅっと握る。
息を吸い込んだらオミの匂いがして安心した。

「意地悪してごめん」

ぽつりと頭上から言葉が落ちてきてふわりと体を抱き締められた。
顔を見ようとしたけれど腕を回されて見上げることが出来ない。

「でも昨日のは本当にショックだったんだよ」
「それは本当に悪かった・・・ごめん」
「いいよ、カゲミツが分かってくれたなら」

漸く腕を解放されて見上げた顔はニコリと笑っていて、唇を指差された。

「仲直りの印にキスしてよ」

今までなら突っぱねるところだけど今日からは違う。
示された唇に自分のそれをそっと押し当てるとオミが満足げに笑った。
その顔が嬉しくてもう一度胸に抱きついた。

「一人で飯食うのって寂しいんだな」
「何、昨日寂しかったの?」

茶化すように聞いてくるオミにうんと頷く。
寂しかったと言うとオミが目を見開いた。

「じゃあ今日は一緒に食べよう」
「お前さっき食ったんじゃねーの?」
「カゲミツが食べるのをじっと見てるよ」
「・・・バーカ」

つい出た言葉は可愛げのあるものではなかったけど、オミはくすくすと笑っている。

「たまには素直がいいけど、やっぱりカゲミツはこうがいいよ」
「何だよそれ」

二人で笑い合ってもう一度唇を重ねた。
これからはもっと自分に素直になろう、そう心に決めてオミの手に指を絡めた。

雨のち晴れ
(雨降って地固まるとはまさにこのこと?)

thank you 10000hits!企画
hanaco様(オミカゲ、シリアスなラブラブ)
リクエストありがとうございました!
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