「タマキ、朝だ。起きろ」 「ん、・・・あ、たいちょ、おはようございます・・・」 その言葉を聞いて、キヨタカがニヤリと唇を歪ませた。 「タマキ、昨日寝る前にした約束覚えてるか?」 「・・・何、ですか?」 「今日この家にいる間は隊長呼びはなし、破ったら」 珍しくキスを交わすだけで眠った昨夜の記憶をなぞる。 優しく啄むようなキスを繰り返しながら、そういえばそんなことも言っていたような気が。 目線を上げると不自然に言葉を切って顔を覗き込んでるキヨタカと目が合った。 「一日俺の言うことを聞く、という約束だったよな?」 そう言ってベッドサイドに置いてあった袋からがさごそと何かを取り出した。 「タマキに似合いそうなのを選んだぞ」 キヨタカが嬉しそうに差し出してきたのはいわゆる猫耳で。 えっと驚いた声を上げてもキヨタカは話し続けた。 「これを今日一日着けて生活しろ」 「でも今日は仕事が、」 「俺が許可する」 そういう問題じゃなくて、と言いたいが言葉で勝てる相手ではない。 仕方なくキヨタカから猫耳を受け取り頭に付けると満足そうに頷いた。 「よく似合っているぞ」 「・・・嬉しくないです」 「そろそろ食事を取らないと間に合わないぞ」 小さな抗議もあっさりと流されてしまったのだった。 さすがに猫耳をつけたまま電車で通勤する訳にもいかないのでキヨタカの車に乗り込んだ。 ニヤリと笑うその口元に、ムカつくのにカッコイイと思ってしまい悔しくなる。 地下駐車場に車を停車させ、二人並んでミーティングルーム入ろうとしたとき腕を引かれた。 「中に入ったらちゃんとにゃあと付けるんだぞ」 「なっ・・・、そんなの無理です!」 「ただ猫耳をつけてるだけなんて、面白くないだろう?」 何をと反論しようとしたけれどキヨタカはさっさとドアを開けてミーティングルームに入ってしまった。 仕方なくタマキも俯きながらキヨタカの後に続く。 「おはよう・・・」 「タマキ」 「・・・にゃあ」 普段通りに挨拶しようとしたら前方から無駄に爽やかな笑顔を向けられた。 顔には出さないけれどわかっているな?と目が言っている。 仕方なくにゃあと付けると、既に集まっていた仲間が目を丸くした。 「タタタタタマキ!それどうしたんだ!?」 「猫耳だね、タマキちゃん可愛いー」 「よくわからないけど、似合ってるね」 なぜか照れまくりどもりまくりのカゲミツと子供みたいにはしゃぐアラタ。 しかしタマキを一番驚かせたのはユウトの予想外の言葉だった。 なんだなんだと興味津々な仲間を避けて自分の席に座る。 この光景が楽しいのか、キヨタカは楽しそうに眺めている。 「黒いから本物みたいだね」 アラタが後ろからポンポンと耳を触っている。 可愛いとか似合っていると口々に言うみんなに反論するも聞き入れてもらえない。 「別に似合ってない、にゃあ」 「にゃあ、なんて本当の猫みたいだね」 カナエに穏やかに微笑みながら言われてしまってはタマキももう反論出来ない。 仕事するにゃと言うとみんなが席に着いた。 そんな感じで一日中みんなからからかわれ続け、帰る頃にはぐったりしてしまっていた。 一日言い続けるとにゃあとつけるのも慣れてくるから怖いものだ。 解散だと言うキヨタカの声にホッと胸を撫で下ろした。 「タマキちゃん、それまた付けてきて欲しいな」 「嫌だにゃあ」 「膨れてるのも可愛いなぁ」 じゃあね、お疲れ様と帰っていくみんなを見送る。 タマキも早く帰りたいが、このまま帰る訳にも行かないのでキヨタカ待ちだ。 明日は休みだからそのまま家に帰ることは出来ないだろうけれど。 タマキと二人になってから30分ほど経ってようやくキヨタカが立ち上がった。 「よかったな、みんなに好評で」 「全然嬉しくないです、にゃあ!」 責めるように言ってもキヨタカはただニコニコと笑うだけ。 むっとして先に部屋を出るとキヨタカに肩を掴まれた。 「タマキ、可愛いぞ」 「う、嬉しくないですにゃあ・・・」 低く囁かれた声に顔が熱くなってしまうなんて。 ささやかな抵抗の言葉は重ねられた口の中に消えた。 肩を押され車に乗り込む。 「さぁ早く帰ろう」 キヨタカの言葉にこれからのことを連想して顔を俯かせる。 夜はまだ長いなと呆れるような期待するようなため息を吐き出して、一歩キヨタカに近付いた。 猫はお好きですか? thank you 10000hits!企画 7かまど様(キヨタマ猫耳装着) リクエストありがとうございました!back |