「タマキ君、写真撮らせてくれない?」

昼休みにタマキと中庭でお弁当を食べているときに思い切って聞いてみた。
目を瞬かせてから俺で良ければとはにかんだ表情を見て、やっぱりモデルはタマキしかいないと思う。
写真部に入部してから初めて出たテーマは笑顔を撮ってくることだった。
聞いた瞬間、真っ先にタマキの顔が浮かんだ。

「具体的に何をすればいいんだ?」
「自然な感じで撮りたいから、カメラは意識しないで欲しいな」
「意識するなって・・・カナエ!」

うーんと悩んでしまった姿にシャッターを押した。
変な顔してただろと詰め寄るタマキからカメラを持ち上げて遠ざける。

「カメラに慣れる練習だよ」

本当は悩む姿が可愛かったからなんて言ったら怒るだろうな。
しかしタマキはそのウソに納得してくれたようだ。

「恥ずかしいけど、頑張ってみるよ」

そう笑った顔は、つい見とれてしまってシャッターを押しそびれてしまった。

翌日の昼休みはアラタやついでにカゲミツ、オミと屋上に来ていた。
夏の日差しの中、吹き抜ける風を気持ち良さそうに受けるタマキにカメラを向ける。

「何してんだよ」

訝しそうに見るカゲミツに事情を説明すると、いいな、とぽつり。

「だからタマキ君を自然な感じで笑わせて欲しいんだ」

そうカゲミツにお願いするとこくりと彼は頷いた。
屋上で撮ったのがバレるとマズイが、笑顔が弾けている。
まさにカナエが目指す自然な笑顔が溢れている。
なかなか満足のいくものが撮れたと思っていると、屋上のドアが開いた。

「あ、キヨタカ先生!」

そう言って表情を明るくしたタマキに思わずカメラを向けた。


数日後、カナエは写真部の部室でアラタと提出する写真を選んでいた。

「このタマキちゃん、すごくいい笑顔だね」
「そうでしょ?これしかないと思ったんだ」

他の写真とは明らかに違うそれ。
あの日カメラを向けたとき、自分の胸が高鳴るのをカナエは自覚していた。
いつ撮ったの?と言うアラタに苦笑を浮かべる。

「こないだ屋上に行ったときなんだけど・・・」
「だけど?」
「キヨタカ先生が来たときの写真なんだ」
「タマキちゃんは本当に先生好きだよねー」

あはは、と笑うアラタに曖昧に頷く。
恋すると人は綺麗になると言うけれど、まさかその姿に恋してしまうとは。
写真を見て確信してしまい、カナエは小さくとため息をついた。

レンズ越しの、
(君に恋しました)
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