今日もタマキは可愛い。
カナエ達と談笑しながらチラリとこちらを見る姿に、きゅんきゅんしてしまう。
小さく手を振って頑張れなんて言われたらやる気が倍増だ。

「カゲミツ、ニヤニヤして気持ち悪いぞ」

自分のデスクに座りながらキヨタカが顔をしかめる。
ヒカルはそんな可愛い行動をしないからきっと妬いているのだ。
一瞬キヨタカをチラ見してタマキに視線を戻すと目が合った。
にこりと微笑まれ、どきり、心臓が止まりそうだ。
カゲミツは長年の思いが漸く叶った幸せを噛み締める。
そう思っているとタマキがおもむろに立ち上がった。
ゆっくりとカゲミツの方に向かって歩いてくる。

「カゲミツ、お願いがあるんだ」

カゲミツの目の前で立ち止まったタマキは笑顔のまま言った。
可愛過ぎて、くらり、眩暈がしそうだ。
何でも聞いてやるとばかりにカゲミツはタマキの顔を見上げる。
耳元に顔を寄せてタマキが囁く。

「好きって言ってよ、ここで」
「・・・えっ!」

ここはミーティングルームで仲間がいて、というか仕事中で。
驚いて目を瞬かせているとタマキが頬を膨らませた。

「ダメ?」
「仕事中だろ」
「でも最近言ってくれないじゃんか」

むーっとする表情すら愛おしいと考えて頭を振る。
何とかタマキの気を違うものに向かせなければ。
今日のご飯は、家で食べると約束しているし。
次の休みは・・・、家でまったりしようとこの前話した。
うーんとカゲミツが頭を悩ましていると、不機嫌なタマキの声が聞こえた。

「言えないの?」
「いや・・・、」

タマキに睨まれてカゲミツがたじろいでしまう。
もちろん大好きだから言えなくはない、がこの状況ではさすがに言えない。

「言ってくれないの?」
「後で言うからさ」
「今じゃないと嫌だ」

あー、と頭を掻き乱す。
可愛い恋人の願いじゃないか。
ここで恥ずかしがってどうする?
自分がタマキを好きなことは周知の事実じゃないか。
男になれとカゲミツは自分で気合いを入れた。

「タマキ、好きだ!」

気合いを入れ過ぎたのか叫ぶような声を出してカゲミツはタマキを抱き締めた。
ミーティングルームが静寂に包まれる。
一瞬の間を置き仲間から一斉に注目を浴びるのが分かった。
タマキは大人しく腕の中に収まっている。

「・・・これでいいか?」
「バカ」

タマキは少し顔を赤く染めている。
言葉とは裏腹に嬉しそうに笑ってタマキもカゲミツの背中に腕を回した。
そしてカゲミツは思うのだ。
俺は世界一の幸せ者だ!
腕の中でニヤリと笑ったタマキをカゲミツは知らないけれど。

little bitch
(君は可愛い小悪魔!)
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