bath time!

「風呂に入ってくる」

二人で夕食を済ませた後、キヨタカはそう言ってバスルームへと向かった。
よし、とうとうチャンスがきた!
タマキは小さくガッツポーズを決めて急いで残りの洗い物を片付けた。

バスルームの前まで行くとシャワーを浴びるキヨタカのシルエットが見えた。
相変わらずだと小さく息を吐き出す。
キヨタカはいつもお風呂をシャワーだけで済ませてしまうのだ。
バスタブに入った方が疲れが取れると何度か訴えたが、やはり聞き入れてはくれないらしい。
言って聞いてくれないのならば、実際に体験してもらうしかない。
正直、明るいところで裸で向き合うのはかなり恥ずかしい。
キヨタカがその気になって、そのままお風呂で・・・なんてことにもなるかもしれない。
しかし、タマキはキヨタカにお風呂の素晴らしさを分かって欲しかったのだ。
それに少しだけお風呂でそういうことになってもいいかなと思うタマキがいた。
最近忙しくて二人で触れ合う時間もなかった。
とにかく、今からキヨタカと一緒にお風呂に入るんだ。
よしっ、と気合いを入れてバスルームのドアを開いた。

「背中流しますよ」

もあもあと煙の中現れたキヨタカの後ろ姿に思わず息を呑んだ。
暗いところでしか見たことなく気づかなかったが、程よく筋肉がついた背中に一瞬見とれてしまう。
タマキ?と呼び掛けられた我に返った。
ちらりバスタブを確認すると、やはりお湯は張られていない。

「またシャワーだけで済まそうとしたんですか?」

少し責めるような口調で尋ねると、バレたかと苦笑気味に返ってきた。
後ろ手でバスルームのドアを閉めて、バスタブのコックを捻る。

「今日は一緒に入って、お風呂の良さを分かってもらいますから!」

そう宣言するとキヨタカは困ったような表情を浮かべた。
とりあえずキヨタカを座らせる。
髪を洗ったかと聞くとまだだと返ってきた。
お風呂が沸くまでしばらく時間がかかる。
背中を流すついでにキヨタカの髪も洗うことにした。
キヨタカはというと、先程からされるがままになっている。
シャンプーを取ろうとして触れた肌が熱くてどきりとする。
そういえば二人とも裸だというのにキヨタカは何もしてこない。
少しだけ、ほんの少しだけ不満に思いながらもキヨタカの頭を洗った。

「痒いところはないですか?」

美容室で聞かれるみたいに声を掛けたが、キヨタカは曖昧にあぁと言っただけだった。
顔を覗き込んでみると、顔が赤らんでいる気がした。
少しぼんやりとした表情にまた心臓がどきりと鳴った。
髪を洗い終えて次は体を洗おう。
キヨタカの背中にタオル越しに触れる。
体が熱い。そう思った瞬間、キヨタカの体くらりと揺れた。
急いで肩を掴んで抱き締め体制を整える。

「悪いな、すぐにのぼせてしまうんだ」

だからいつもシャワーで済ますのかと漸く納得した。
言ってくれればいいものを、きっと格好悪いとかそんな理由で我慢させてしまったのだろう。
途端に自分の考えだけで無茶をさせてしまい申し訳ない気持ちが込み上げてくる。

「すみません、俺・・・」
「いいんだ、俺のことを思ってやってくれたんだろ?」

まだ少しふらついているキヨタカを支えるために、タマキの首にキヨタカの腕を回した。
キヨタカはありがとうと、優しく頬を撫でてくれた。
そんなキヨタカの優しさに、また胸が苦しくなる。
もう一度すみませんと伝えようと思い、顔を見上げた。
まだ少し赤らんだ顔、髪から滴り落ちる水、暑さから熱を持った体。
見た瞬間、タマキは急速に自分の体が熱を持つのを感じた。
もちろん暑さからではない。
こんなときに、タマキは欲情してしまったのだ。
いつも自分を快楽に溺れさせる、その唇から目が離せない。
キス、したい。いや、何考えてるんだこんなときに。
そんな葛藤しているとしていると、その唇が優しく名前を呼んだ。
自分の気持ちには逆らえない。
タマキは空いてる腕をキヨタカの首に回し、少し背伸びをすると自分の唇を押し付けた。
驚いて目を見開くキヨタカに構わず舌を入れる。
舌の絡み合う音がバスルームに反射していつもより大きく聞こえる。
その音にまた欲情を煽られてタマキはより深く舌を絡めた。
そのうち反撃されるだろうと思っていたが、まだ主導権はタマキにあるようだった。
キヨタカを壁に押し付け、上目遣いで触れる程度のキスをする。

「俺、・・・」

自分から仕掛けておいて、いざ言葉にすると急に恥ずかしくなって口ごもってしまう。
もじもじとしていると、上から優しい声が聞こえた。

「俺が欲しいか?」

恥ずかしかったが、首をこくりと下に動かす。

「タマキが俺に欲情してくれて嬉しいよ」

のぼせていたのが落ち着いたのか、キヨタカははっきりした口調で言った。

「ついでに可愛く俺を誘って欲しいんだが」

にやりと唇を歪めるその姿にすら体が熱くなる。
タマキはぎゅっとキヨタカの体に抱き着いた。
まだキヨタカの体は熱いが、これはのぼせているせいではないだろう。

「隊長が、」
「今は隊長じゃないだろ?」

キヨタカさん、と言いかけたところでまた上から鋭い視線を感じた。

「キ、キヨタカが、・・・欲しいです・・・」
「よくできました」

キヨタカは髪をさらりと撫でると、唇にキスを落とした。
タマキがゆっくりと目を閉じると、優しいキスから一変してどんどん深さを増していった。

「んんっ・・・」

時折鼻から抜ける自分の声が恥ずかしい。
しかしキヨタカが可愛いから我慢するなと言うので、つい嬉しくなってしまう。
タマキが壁に押し付けていたはずなのに、知らないうちに位置が逆転して今はタマキが壁に押し付けられている。
漸く長いキスから解放されると、キヨタカは額に首に鎖骨にと次々にキスを落としていく。
熱を持った体には、その小さな刺激さえ快感になるようでタマキはその度に甘い声をあげた。

「ここ、こんなにも固くして」

キヨタカはわざと耳元で腰に響く低い声で囁いて、ぎゅっとその部分を摘んだ。

「あぁ、んっ!」

片方は指で摘み、もう片方は舌で転がされタマキは絶え間無く甘い声をあげている。

「や、だめっ!」
「ダメじゃなくてもっとだろ?」

キヨタカはそう言うとちゅっと片方をきつく吸い上げる。
思わず膝から落ちそうになって、キヨタカの背中に爪を立ててしまった。
荒い息を整えながら謝ると、キヨタカは気にするなと笑ってくれた。
キヨタカにしがみつくような体制からバスタブに手をつくように言われた。
明るい中お尻を突き出すような体制にさすがに少し恥ずかしくなる。

「あんまり見ないで下さい・・・」「嫌なら風呂の中でやってもいいんだぞ」

新しい張られたばかりのお風呂に入らずに汚してしまうのは気がひけた。
それに今のタマキは理性より本能が勝っていた。
首を横に振って早く、と懇願すると入口に宛がわれていたキヨタカが大きくなった。

「もう少しこの風景を楽しんでいたかったんだがな」

そう言うとキヨタカはいやらしい手つきでさらりとお尻を撫でた。
そのいやらしい手つきに、タマキは自身を更に大きくさせる。

「タマキ、可愛いよ」

キヨタカは耳元でそう囁くと、その長い指を一本タマキの中に入れた。
最初は慣れなかったこの痛みも、今のタマキには物足りなく感じてしまう。
一番感じる場所に誘おうと、タマキの腰が自然と揺れた。

「指一本じゃ物足りないか?」

キヨタカの問いに頷いて答える。
その瞬間感じる一点に触れて甲高い声をあげた。
キヨタカは早急に指を増やして中を掻き混ぜる。
タマキは絶えず甘い声をあげて、膝を震わせている。
もうそろそろ、立っていられなくなりそうだとキヨタカが感じて細い腰を支える。

「タマキ、いいか?」

普段は確認なんてしないのに、今日に限って聞いてくるキヨタカに羞恥心を煽られる。
あれだけヨガっておいて、今更恥ずかしがるのもおかしな話かもしれないけど。

「早く、して下さい」

掠れた声でタマキが言うと熱いものが中に入り込んできた。
あまりの質量にタマキが息を詰めるとキヨタカが優しく手を握ってくれた。

「動くぞ」

そう言うキヨタカの声はいつもより余裕がないように聞こえて、タマキは幸せを感じる。
最初はゆっくりと出し入れされていたが、どんどんとそのスピードが早くなる。
背中から感じるキヨタカの荒い息遣いが興奮を加速させる。
タマキ、と切羽詰まった声で呼ばれて中心をぎゅっと握られた。
その反動でキヨタカを締め付けてしまったらしく、呻き声が聞こえた。
そのまま激しく擦られて前後からくる快感に耐え切れず、タマキは思わず達してしまった。
その締め付けによって、キヨタカもタマキの中に熱を吐き出した。
ぐったりとしたタマキをキヨタカが背中から抱いて支える。

「大丈夫か?」
「あ、はい。平気です」

小さな声で気持ち良かったですと呟いて、我に返って顔を赤面させる。
キヨタカはというとすっかり回復したようで、ついでにいうと下半身もまた元気になっているようだった。

「タマキは俺と風呂に入りたいんだよな?」

ニヤリと笑うその口元にタマキが青くなったのも束の間、そのまま中に入って第二ラウンドが始まってしまった。



「こんなことなら、これから風呂の中にも入ろうかな」

タマキが一緒に入ってくれるとき限定で、とキヨタカが笑った。

「しらばくは一緒に入りませんから!」

ベッドの上で痛む腰を労りながらタマキはぷいっとそっぽを向くのだった。

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