僕たちのルール

ルールその1 決して、口に出してはいけない

月の光が差し込む公園で、俺たちは木の陰に隠れてキスを交わしていた。
この光景を仲間が見るとどんな顔をするんだろうか、なんてぼんやりする頭で考える。
テロリストと、そのテロリストを追っている特殊部隊の二人。言わば敵同士。
そんな敵同士な俺たちが、闇に隠れて逢引しているなんて。
バレると怒られるどころの話ではないだろう。最悪、殺されるだろうな。
それでもこの関係をやめることが出来ないのは、きっと俺が・・・。

「何を考えているんだい、カゲミツ」

考え事をしていると、急にオミが唇を離した。
切れ長の目が、少し不機嫌そうに俺を見ている。
なんでもない、と首を軽く振るとオミが時計を見た。
もう少しだけ、と口に出しかけて噤む。
口に出してしまうと、歯止めが利かなくなりそうだった。
もっと一緒にいたい、いや、ずっと一緒にいたい。
好きだ、決して口に出してはいけないその言葉を言ってしまいそうで。
そんな俺の様子を気にすることもなくオミはさらりと言った。

「もうそろそろ、帰る時間だよ」

散歩と呼ぶにはお互い少し長居し過ぎた。
早く帰らないと同居人に疑われてしまう。
頭では分かっているけれど、俺は動き出すことが出来なかった。
オミは「さよなら」とも「またね」とも言わずに歩き始めていた。
次も会えるなんて確証もないし、最初に二人で決めた約束だった。

ルールその2 別れ際は、振り返っても呼び掛けてもいけない

去っていく背中を見つめていると、さっき言い掛けた言葉がまた溢れそうになる。
この公園から一歩出れば、俺たちはまた敵同士として戦うことになる。
任務でオミの姿を見付けると、動揺が隠せない。
自分をめちゃくちゃにしたものを壊そうとするオミを見ると、心が痛くなる。
自分に何が出来るかはわからないけど、オミを救いたいと心から思うのだ。

「・・・オミッ!」

ついに俺は堪えることが出来ずに名前を叫んでいた。
オミの肩がびくりと揺れる。

「別れ際は潔くって約束だろ?」

オミは後ろを振り向くことなく言った。

「ルールは壊すためにあるんだ」

俺はそう言うと、オミの背中を目掛けて走り出していた。
その場に立ったままのオミに背中からぎゅっと抱きつく。
温かい体温が心地良くて、首筋に顔を埋める。

「オミ、・・・好きだ」

ずっと一緒にいたい、お前を救いたい。
溢れ出る気持ちをそのまま言葉にすると、オミが小さく笑った。

「なら一緒に来るかい?」

どうせ来ないだろうとオミは自嘲気味に笑っている。
オミは俺の腕を解いて向き合った。

「さぁどうする?こちらに来れば、二度と帰れなくなるけど」

そう言われて仲間の顔を順番に思い出す。
アラタ、ナオユキ、ユウト、トキオ、ヒカル、キヨタカ、・・・タマキ。
きっとカナエと二人で逃げたタマキは、こんな気持ちだったんだろう。
そう思いながら、オミに取られた腕を振り払うことを出来ずに俺は歩き出していた。

bysein様(墜ちるお題)
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