キーンコーンカーンコーンと昼休みを告げるチャイムが学校中に響き渡る。 ざわざわと騒ぎ出した廊下を抜けて、タマキは一人屋上へ向かう。 扉を開くと眩しい太陽の光に目を細める。 吹き抜ける風が気持ちいい。 んっと伸びをして、誰もいない屋上に寝転がる。 生徒たちの騒ぐ声が、遠くに聞こえた。 「ここで何をしている」 寝転がっていると誰かに声をかけられ瞳を開く。 太陽を遮るように顔を覗き込んでいるのは、担任のキヨタカだった。 慌てて体を起こすとキヨタカは眼鏡を押し上げた。 「ここは立入禁止のはずだぞ」 扉にも書いてあっただろ、と言われタマキは俯く。 まさかよりによって教師にバレるとは思ってもいなかった。 すみません、と小さな声で謝る。 「ここで何をしていたんだ?」 怒られると思っていたら、優しい声が返ってきた。 顔を上げるとキヨタカはフッと笑ってタマキの隣に腰を下ろした。 「そんな泣きそうな顔をするな」 頭をがしがしと撫でられポカンとする。 「あの、・・・怒らないんですか?」 「理由次第、だな」 キヨタカはそう言って笑うと大きく背伸びをした。 心地よさそうに風を受けている。 「・・・俺、この場所が好きなんです」 タマキが転校してきて二週間。 周りは優しくしてくれているが慣れない環境にはやはり疲れる。 そんなとき見つけたのが、この場所だった。 立入禁止と鍵のかかったドアノブを回すと、そこはいとも簡単に開いた。 それ以来、一人になりたいときはここに来ていたのだ。 ぽつりぽつりと話すタマキにキヨタカは相槌もせず前を見て聞いていた。 「でも、もう来ませんから」 だからもう少しだけここにいさせて下さい。 タマキはそう呟くと体操座りしている腕に顔を埋めた。 キヨタカは依然黙ったままだ。 さらりと吹く風が、とても優しく感じる。 「・・・俺も同じだ」 キヨタカはそう言うと両手をあげてごろんと屋上に寝転がった。 キヨタカの言葉に、タマキは顔を上げる。 「俺しか知らないと思っていたのにな」 そう笑うキヨタカにタマキは何も言うことが出来ない。 「バレないようにするんだぞ」 体を起こしタマキの肩に手を置いた。 意味を理解したタマキの表情がふわりと明るくなった。 「お前はそうやって笑っている方が可愛い」 キヨタカはそう言ってウィンクすると階段へと向かった。 しばらくはきょとんとしていたタマキだったが、言われた言葉を思い返して顔が熱くなる。 この熱さは、きっと太陽のせいだ。 タマキはそう思い込んで、持って来ていたお弁当を広げた。 ふたりだけの秘密の場所 |