特殊部隊に正月休みや盆休みはない。
だから世の中が浮かれているクリスマスも自分には無関係のイベントだと思っていたのだけど。

時は12月24日。
向かい合って座っているのは自分の上司であるキヨタカだ。
それだけだとここはミーティングルームかと思いそうだがそうではない。
キヨタカの家で、二人で向かい合って座っているのだ。
閉店間際のデパートでギリギリ買うことの出来たチキンとワインがテーブルの上には置かれている。
キヨタカの家で向かい合って食事をすることは別に珍しいことではない。
だけど街のクリスマスムードにあてられたのだろうか。
それとも初めてイベントらしく過ごしているせいだろうか。
(なんか、緊張する…)
タマキはどこか落ち着かない気持ちでキヨタカと向かい合っていた。

「食べないのか?」

流暢にチキンを切り分けながらキヨタカが言った。

「いえ、いただきます」

キヨタカが切り分けてくれたチキンを一口食べる。
きっと美味しいはずなのに、緊張のせいか味をほとんど感じない。
緊張をほぐすためにワインをぐっと呷っても、一向に酔いそうもない。
だけどキヨタカは気にしていないようでワインを注いでくれた。
いちいちそれが様になっている。
少し見惚れてしまったけれど、今日はそれをからかうようなことは言わない。
紳士的な態度を崩さない。
もしかしたらキヨタカもクリスマスの雰囲気に流されているのかもしれないなとタマキはちらりと思った。

どこかいつもと違う雰囲気の中、食後のケーキも食べ終わった。
軽く片付けをすませ、いつもならそろそろ帰るところだが今日はその必要がない。
明日遂行する予定だった任務が急になくなってしまったのだ。
となればクリスマスに恋人の家に来ているのに帰るなんて野暮なことはしない。
先程からやけに紳士な振る舞いのキヨタカはいつものように誘ってくることなくソファーに座っている。
クラシックの賛美歌が流れる静かな室内。
キヨタカの隣で静かに耳を傾けていると、さっき飲んだワインが今更回ってきたみたいだ。
ソファーの上に無防備に置かれているキヨタカの手に、自分のものを重ねた。

「キヨタカ、さん」
「どうした?」
「ハグ、してもいいですか?」

普段ならこんなこと絶対自分から言えない。
顔が熱いのを自覚しながら聞くとキヨタカはふんわりと微笑んだ。
いつもならばいやらしい笑みを浮かべそうなのに。

「ああ、構わないぞ」

そう言って広げられた両腕に遠慮がにに飛び込んだ。
ふわりと香るキヨタカの匂いに酔った頭がくらりとする。

「キヨタカさん」
「なんだ?」
「ケーキも食べたことですし、」

…次は俺を食べませんか?
抱きついたことを利用し、密着して耳元で言うとキヨタカはニヤリと笑った。
これはいつものいやらしい笑い方だ。

「今日は随分積極的なんだな」
「クリスマスですから、特別です」

特別ついでに自分から唇を寄せる。
いくら酔っていても恥じらいは残っていたので頬に。

「メリークリスマス」
「メリークリスマス」

二人で言い合ったのを合図にどちらともなくキスをしたのだった。

*

「来年は休みにしてミニスカサンタでもしてもらおうかな」
「絶対しませんから!」

翌朝昨夜の紳士的な態度はどこへやら、いつもの調子のキヨタカにタマキが違う意味で顔を赤くしたのであった。

Merry X'mas!

ついった診断メーカーより
クリスマスの夜キヨタマが
【したいこと】:ハグ
【されたいこと】:食事
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