曖昧に甘い僕らの距離感

「お前らいい加減くっつけよ」

ヒカルが言うとタマキとカゲミツが同時に振り返った。
不思議そうなタマキと顔を赤くしているカゲミツ。

「ヒカル、お前黙れよ」

二人で新商品だというお菓子を食べて盛り上がっていたのに邪魔しやがって。
口には出さないがヒカルを見る目が不機嫌そのものといった感じで睨みつけてくる。

「俺が悪うございましたー」

わざとらしく言ってヒカルは席を立った。
お互い好きなのにお互い気付かないってどれだけ鈍感なんだか。
全く、見てるこっちがもどかしいと心の中で悪態をつく。
へたれで鈍感な相棒の恋を応援してやろうと思ったらこの有様だ。
ちぇっと悪態をついてキヨタカのデスクに向かった。

「これずっと探してたんだ、ありがとうカゲミツ!」
「いや、タマキが探してたの知ってたから・・・」

タマキが喜んでくれて嬉しいよとカゲミツは頬をかいた。
その言葉にタマキが少し驚いて嬉しそうな顔をしたことにカゲミツは気付かない。
その新商品を探すため、カゲミツ(と連れ回されたヒカル)が昨晩どれだけの時間を費やしたのか、タマキは知らない。

「あいつら何とかしてくれ」

仕事中のキヨタカにヒカルが声を掛ける。
仲睦ましく肩を寄せ合う二人は誰も入り込めない空気が漂っていた。

「人の恋愛を覗き見なんて感心しないな」
「お前、人のこと言えんのかよ」

じと目でキヨタカを見るも心外だなと返された。
いい加減、自分たちの放つ空気に気付いて欲しい。
恋愛には奥手のユウトですらすごいねと呟いている。

「あの、さ・・・今日よかったら夕飯一緒に行かないか?」
「お、おう!もちろん行くぜ」

お菓子を全て食べ終えた二人は夕食に行く約束をしていた。
もどかしい・・・とミーティングルームがため息に包まれる。

「付き合いたての高校生みたいだね」

子供のくせに、アラタが妙にませた発言をする。

「でもこのままカゲミツ君が手を出さないなら僕が貰っちゃおうかなぁ〜」

ふふふと笑うアラタにヒカルはコイツなら本気でやりかねないとため息をひとつ。
こんな子供にまでなめられて恥ずかしくないのかカゲミツ!と心の中で呼びかけてももちろん答えはない。
タマキとカゲミツは相変わらず縮まりきらない距離で笑い合っているだけだ。
遠過ぎず、近過ぎず、かと言って適度とも言えない微妙な距離。

「飯食い終わったらさ、うちの家来ねぇ?」

この前タマキが見たいって言ってたDVD借りてきてるんだと頬をかく。
・・・明日も休みだし、と続けたカゲミツにタマキの顔が赤くなる。
カゲミツはその意味が分からずに一人不思議そうな顔をしている

「タマキは何を想像したんだろうな」
「黙れこの変態眼鏡」

キヨタカとヒカルの会話も耳に入ることなく、二人の世界は続いている。
この二人が相手の気持ちに気付くときが来るのだろうかとヒカルは憂う。
しかしヒカルの心配は杞憂で、手に触れたくてもじもじとするカゲミツにタマキがそっと手を重ねるのは10秒後のお話。

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