「おまえらあんまり見せ付けるなよ」

カゲミツが地味に凹んでるからほどほどにな。
それはヒカルに言われたことがきっかけだった。
自分達はいつも通りに過ごしているだけだった。
だけど自分達は気付いていないけれど、周りからはそう見えているのかもしれない。
その場は驚いて愛想笑いで済ませてしまったけれど。
帰宅後、夕食も済ませお腹がいっぱいになったところでタマキが口を開いた。

「俺達って見せ付けてるように見えてるのかな?」
「昼間ヒカル君に言われたこと気にしてたの?」

アラタは意に介せずといった感じで帰り道に買った雑誌をめくっている。

「そんなつもりはないけど、やっぱり公私混同と思われるのはよくないと思うんだ」
「別にそこまで気にしなくていいんじゃない?」
「そういう訳にもいかないだろ」

だから、と言葉を切るとようやく雑誌に向いていた顔を上げた。

「職場では意識してあんまり近付き過ぎないようにしないか?」
「うーん、別にいいと思うんだけど。タマキちゃんがそこまで言うなら」

あまり乗り気ではなさそうだったがアラタは同意してくれた。
こうして次の日から二人は"近付き過ぎないこと"を意識して仕事に臨むようになったのだ。

*

「ケーキを買ってきたよ」

駅前に新しいお店が出来たんだと笑うユウトがテーブルに箱を広げる。
美味しそうだから全部買っちゃったとナオユキが付け加える。
全員がひとつ食べてもまだ余る量にアラタが声を掛けられた。

「もうひとつ食べていいよ」
「本当?ありがとう!」

言われるがままケーキに手を伸ばそうとしたアラタをタマキが制した。

「アラタ、これ以上はダメだ」
「えー、だってユウト君が」
「いつまでも甘えてちゃいけないぞ」

アラタが真っ先に声を掛けられる理由。
それは背格好が大きくなったとはいえまだみんなが子供扱いしてしまうからだ。
ぷーっと顔を膨らます姿もまだまだ子供っぽい。
いつもはタマキも甘やかしてしまうところだけど、今日は心を鬼にした。

「タマキちゃんはいつまで経っても子供扱いするんだから」
「今日はやめなさい」

ダメだと言い通すタマキに仲間達が奇異の目を向ける。
だけどあまり仲良くしていると思われてはいけない。

「言うこと聞かないと今日の晩御飯作らないからな」
「・・・はーい。ユウト君ありがとう」
「よし、今日はアラタの食べたいものを作ってやるから」

最初は驚いた仲間達も次第に反応しなくなっていた。
みんな慣れたのだろう。
これで公私混同じゃないと言い切れるな。
そんなタマキの見当は大きく外れていたけれど、そんなこと知る由もない。

そしてとある任務のことだった。
久々にトキオとペアを組んだタマキが集合場所に戻ってくると、アラタが頬から血が滲んでいたのだ。
スッと一直線に切れた傷は大きなものではないが痛そうだ。
今すぐ駆け寄ってすぐに手当をしてやりたい。
だけどその気持ちをグッと堪えて、タマキは口を開いた。

「アラタはそれくらい大丈夫だよな?」

仲間達の視線が一気にタマキに集まる。

「アラタは強いんだからそれくらい平気だろ?家に帰ったらちゃんと手当してやるから今は耐えろ」

ちゃんと言えた。
ホッとしてアラタから視線を外すとあーあという呆れたヒカルの声が聞こえた。

「相変わらず仲がいいことで」

聞かされるこっちの身にもなってみろよと頭をかいてワゴン車の助手席に乗り込んだ。
意味がわからずにきょとんとしていると、ポンとトキオが肩に手を置いた。

「変に無理しなくても今まで通りでいいじゃん」

それだけ言ってトキオもワゴン車に乗り込んでしまった。
呆然と立ち尽くしているとアラタに名前を呼ばれた。

「リーダーもああ言ってるし、やっぱり元の僕達でいいんじゃない?」

そう言ってアラタに腕を引っ張られた。
僕タマキちゃんの隣ねという声がワゴン車の中に響く。
タマキは未だになんだかよくわからないけれど、無理してアラタに接しなくてもいいらしい。
当然のように開けられたアラタの隣に腰を下ろすと、待っていたかのようにワゴン車が走り出した。

見せ付けているつもりはないんです


アキヒコ様(名実共にくっついてラブラブなアラタマ(わりとツンデレ同士))
リクエストありがとうございました!
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