未来をぜんぶ、きみにあげる

カナエに撃たれ瀕死の重傷を負ったカゲミツだったが、奇跡的に後遺症も残らず無事に退院出来る日がやってきた。
タマキ達が病院に着くとカゲミツは両親と一緒に担当の医者に挨拶しているところだった。
しばらくすると挨拶が終わりカゲミツが振り返りこちらに気付く。
両親と共にゆったりとした歩調でこちらへ向かってきた。

「カゲミツ、退院おめでとう」

みんなで買った花束を手渡す。
照れたように頬をかきながらありがとうと言う姿に、カゲミツはちゃんとここに存在するんだと実感して顔が綻ぶ。
アラタがおかえりカゲミツ君と抱き着いている。
みんな、カゲミツとこうやってまた会話出来ることが嬉しくて仕方ないのだ。

「カゲミツも病み上がりで疲れているだろうから、そろそろ帰るぞ」

カゲミツの両親と話していたキヨタカがみんなに声を掛ける。
アラタはカゲミツに抱き着いたままだったが肩に手を置いて諭すと腕を離した。

「2,3日後には復帰するから」

カゲミツは少し屈んでアラタに目線を合わせて頭を撫でた。
嬉しそうに頷くアラタを見て微笑むカゲミツに胸が締め付けられる。
自分以外に、そんな笑顔を見せるのはやめて欲しい。無理だと分かっているけれど。
カゲミツは優しい。そんなところに惹かれたのだと自覚しているけれど。
キヨタカからカゲミツが撃たれて危ない状況だと言われたとき、初めて自分の気持ちに気付いた。
自分がどれほどカゲミツに支えられてきて、どれほど頼りにしてきたか。
・・・どれほど愛しいと感じていたのか。
その優しさに触れられないと思うと、涙を止めることが出来なかった。
カゲミツが一命を取り留めたと聞いたときはホッとしてまた涙がこぼれてしまった。
そしてその時、カゲミツが退院するときに告白しようと心に決めたのだった。

帰り際カゲミツに近付いてこっそり耳打ちをする。

「今日うちに来れないか?無理だったらいいんだけど」

ちらり、カゲミツの顔を横目で見る。
驚いた顔で頬を赤く染めている。
目が合うと、いいぜ、とぽつり呟いた。

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