「無茶するなと言ったのは自分じゃないですか」

むすっと怒り顔のタマキがシャツを脱いだキヨタカの腕に触れる。
ぐるぐると肩から包帯を巻きながら、少し動いただけでしかめられる端正な横顔を見てタマキは溜め息を吐き出した。

今日の任務はシンジュクに蔓延るマフィアの制圧だった。
普段なら遠くから指示を出すだけのキヨタカも、たまには実戦に出ないと感覚が鈍ると言って任務に参加していた。
最近勢力を伸ばしつつある組織だったけれど、その中でも末端のひとつを潰すくらいならさして難しいことでもない。
犯人達も生け捕りにしろという命令がくだっていたので派手な戦闘になることもないだろう。
犯人達のいる部屋の前で威嚇用に拳銃を構え、コンビを組んでいたアラタに目配せをして部屋に押し入ると静寂を切り裂くように大きな銃声が聞こえたのだ。
驚いて振り向くとそこにはキヨタカが立っていて自慢のモンスターから硝煙が上がっていた。

「大人しく投降するか撃ち殺されるか選ばしてやろう」

不敵に笑ったキヨタカと、凍り付く犯人達と。
壁にめり込んだ銃弾がその威力の高さを物語っている。
威嚇射撃としてはやり過ぎだ。

固まってしまい動けない犯人にキヨタカが銃口を向ける。

「あと五秒でタイムリミットだ」

ゆっくりと数え出したキヨタカに弾かれたように犯人達は投降を申し出た。
きっとこいつらくらいなら、銃をちらつかせただけで投降していただろうに。
犯人に手錠をかけて上層部に連絡をしているキヨタカをちらりと盗み見た。
モンスターを撃った手で携帯を耳に当てているがうっすらと辛そうなのが見て取れる。
他の仲間達には気付けないほどうっすらと、だが。
そして無事に引き渡し、軽いミーティングを終えて今に至っている。

「あんな奴らに撃つ必要はなかったんじゃないですか?」
「最初に言っただろ?実戦感覚を鈍らせない為だ」
「射撃の練習なら射撃場でやって下さい!」
「射撃場だと実戦の緊張感がないだろう」

射撃の練習にあのような威嚇をされた犯人を少し不憫に思う。
はぁと溜め息を吐き出すとキヨタカは悪びれた様子もなくすまんなと謝った。

「撃った後はこんなにも反動があるのに無茶しないで下さい」
「心配させて悪いな」
「別に隊長を心配してるんじゃありません!隊長が万全でないとリーダーの俺が困ると思って言っているだけです」

包帯巻き終えたところを軽く押してやると辛そうなうめき声が漏れた。

「毎回介抱するのも楽じゃないんです」
「こんな姿、タマキにしか見せられないからな」

ちくりと嫌味を言ってやると、予想外の答えが返ってきた。
怒っていたはずなのに、顔が熱くなってしまう。

「と、とにかく次は気をつけて下さいね!」

ごまかすようにそう言ってキヨタカにシャツを着せた。
そうは言ってもキヨタカはまたモンスターを撃つだろうし、タマキも介抱するだろう。
キヨタカが他の人にこんな姿を晒す訳がないし、タマキも見せるつもりはない。

「もう帰りますよ、キヨタカさん」

先に立ち上がって手を差し延べれば、大きな手がそれを包み込んでキヨタカもゆっくり立ち上がる。
支えるのを口実にぴたりと寄り添えばキヨタカも手を肩に回してくれて。

「ありがとう」

そう囁かれるとさっきまでの怒りなんてどこかへ飛んでいってしまって。

「あんまり心配させないで下さい・・・」
「これからは気を付けよう」

少し高い位置にあるキヨタカの顔をちらりと見遣ってから顔を俯かせると、大きな手の平で髪を撫でられた。
それから触れるだけのキスが降ってきて、上手く丸め込まれているなと思いながらも嫌な気はしない。
キヨタカの歩調に合わせて二人はいつもよりゆっくりと家路についたのだった。

心配なんか、してません
(なんて、うそ)

ついった診断メーカーより
キヨタマへのお題は『「怒り顔で、腕に触れる」キーワードは「ツンデレ」』です。
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