「カゲミツ、」
「うざい」

好きだよと続ける前にカゲミツが不愉快そうな顔でそれを遮った。

「最後まで言わせてくれてもいいじゃん」
「聞きたくない」

ぱたんとノートパソコンを閉じて立ち上がったカゲミツに続いてオミも立ち上がる。

「どこ行くの?」
「昼飯だ」
「じゃあ俺も」
「来んな」

心底迷惑そうなカゲミツにオミが奢るからと言っても表情は変わらない。
しかし何を言ってもオミは勝手についてくるのだから、カゲミツは黙ったまま歩き出した。

オミが自分の気持ちを自覚して早二ヶ月。
こうして毎日のようにカゲミツに気持ちをぶつけているけれど、反応は一向に良くならない。
最初はタチの悪い冗談だと思われていたことを考えると、この気持ちが真剣なんだと分かってもらえただけ進歩と言うべきかもしれないけど・・・。
そんなことを考えながらご飯を口に運んでいると、カゲミツがふと視線をオミに向けた。

「俺の顔に何かついてるのか?」

無意識のうちにじっと見つめてしまっていたらしい。
今まで大抵の女の子ならこれでオチたんだけどなとぼんやりと考える。

「カゲミツはどうしたら俺を好きになってくれる?」
「天変地異が起こってもねぇよ」
「・・・そう」

それはつまりお前を好きになる可能性なんてゼロだと言われているようなものだ。
報われるとは思っていなかったけれど、ここまではっきりと拒絶されるとも思っていなかった。

「モテるんだからもっと可愛い女の子とかに言ってやれよ」

それじゃダメだと前にも説明をしたけれど、カゲミツには伝わっていなかったらしい。
心の中で溜め息を吐き出す。
それ以降お互いに黙ってしまい、無言のままミーティングルームに戻ってきた。

好きだと伝えてから、カゲミツとの距離が遠くなってしまった気がする。
名前を呼べば少し嫌な顔をされ、二人の時に交わしていた他愛もない会話はめっきりなくなってしまった。
好きだ、なんて言わない方がよかったのかもしれない。
天変地異が起こってもないと言われたことにオミは少なからず傷付いていたのだ。
もう、諦めた方がいいのかもしれない。
そんな考えが浮かび始めたとき、ヒカルに言われたのだ。

「オミ、こんな言葉を知ってるか?」
「・・・何だい」
「押してダメなら引いてみろってな」

追いかけると逃げて行くらしい

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