最後に二人きりで会ったのはもう二週間も前のことだ。
職場では毎日のように顔を合わせているが、それは上司と部下としてであって恋人としてではない。
だから思いっきり甘える訳にもいかないし、あの端整な顔をじっと見つめることだって出来ない。
こっそり買ったキヨタカ愛用のフレングラスで寂しさを紛らわせようとしたけれど、それももう限界で。
最後に会った日から×が続くカレンダーを眺めてタマキはため息を深くひとつ吐き出した。
うじうじ悩んでたって仕方がない。
疲れているであろう恋人を気遣う大人のフリはもうやめだ。
財布をポケットに突っ込んで、二週間分の寂しさを抱えて家から飛び出した。

*

「タマキが連絡もなしに来るなんて珍しいな」

真夜中、突然インターフォンを鳴らしたタマキをキヨタカは快く迎え入れた。
目元にうっすら浮かんだクマが見えたけど、あえて気付かないフリをして首に腕を回す。
久し振りに感じるキヨタカの体温が心地良い。
背伸びして首元に顔を埋めて思いっきり吸い込むと、ふわりとよく知るフレングラスの香りがした。

「タマキから抱きついてくるなんて、今日は珍しいことだらけだな」
「二週間、ですよ」
「え?」
「会えない日を数えるのにはもう飽きました」

そう言って形のいい唇に自分のものを押し付ける。
キヨタカの言う通り、普段なら恥ずかしがって自分から出来ないことばかりだ。
だけど恥ずかしさを忘れてしまうほど寂しかったのだ。
甘えるようにキヨタカの胸に寄り掛かると上からフッと笑う声が聞こえた。

「構ってやれないとこんなに素直になるのか」

たまにはこういうのもありかと笑った声に膨れて抗議する。

「次こんなに放っておいたらキヨタカさんのことなんて忘れますからね」

ぎゅっと抱きついたまま言っても全然信じてもらえなさそうだけど。
一応睨むように見上げると大きな手が優しく髪を撫でた。

「ならタマキに忘れられないようにらしないとな」

首に回ってた腕を取り確認するように手首に鼻を寄せた。

「香りだけじゃ満足出来ないようにしてやろう」

ハッとしたがもう後の祭り。
手首に軽く口付けられ、行くぞと誘われればタマキは黙って手を引かれることしかできない。
二週間分の寂しさを埋めるようにタマキは自分を引く手をぎゅっと握り返した。

あえない日を数えるのはもう飽きた

みじかき芦のふしの間も
 あはでこの世をすぐしてよとや

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