ああ、もう!
何か言いたいことがあるなら言えばいいじゃないですか!
ミーティングルームについてからニヤニヤとした視線を送り続けてくるキヨタカに心の中で毒づく。
なぜ心の中だけに収めているかというと、実際口にしてしまえば自分が辛い立場になるのが目に見えているからだ。
だから心の中でだけブツブツと文句を言いながらその視線を無視することに専念する。
そもそもこんなことになった原因はあな、

「タマキ」

最後に来たカゲミツが落ち着いてパソコンを開いたのを見て、キヨタカが声を掛けてきた。
普段なら何でしょうと言うところを無言で振り向く。
ニコリと笑った顔にぶるりと背筋が震えた。

「うちの部隊はクールビズを推奨しているはずだが?」

その言葉のせいで仲間の視線が一気に集まる。
ノーネクタイで第一ボタンを開けた仲間達の前に、しっかりと一番上までボタンを閉めてネクタイまでしているタマキは一人堅苦しく見える。
昨日まではタマキも同じようにノーネクタイに第一ボタンを開ける格好をしていたはずなのに。
みんなが不思議そうな顔をタマキに向ける。
ちらりとキヨタカを見ると人の悪い笑顔を浮かべていた。

「今日はきっかりしたい気分だったんです」

我ながら苦しい言い訳だと思う。
しかし本当の理由を言う訳にはいかない、絶対に。
ぎろりと他の仲間に気付かれないようにキヨタカを睨みつけると、さらりと受け流された。
そんなことで怯むような人じゃないとは最初からわかっていたけれど。

「しかしそれじゃあ暑いだろう」

まさか更にに追い込むようなことを言うとは思っていなかった。
唖然としているとアラタが寄ってきてネクタイを軽く引っ張った。

「クールビズになったとき、涼しくなったって言ってたじゃない」
「そうだ、見てるこっちまで暑くなるぞ」

まんまるな瞳で見上げてきたアラタにキヨタカが加勢する。
こんなことになってるのは、一体誰のせいだと・・・!

黙り込んだタマキにキヨタカがいやらしい笑顔で言い募る。

「・・・それともボタンを開けられない理由でもあるのか?」

その理由を一番わかっているくせに!
どう言い返そうかと考えていると、カゲミツの助け船が入った。

「タマキがそういう気分なんだから、それでいいじゃねぇか」

その言葉にそれもそうかと他の仲間達の興味も散っていった。
キヨタカはというと、つまらなそうな顔をしているけれど知ったことではない。

第一ボタンを開けられない理由、それはただひとつしかない。

アンタのせいだよ!

なのに後からお前は俺のものだと見せびらかせたかったと言われ喜んでしまい、更に人に見せられる状態ではなくなってしまったのは自分の責任だと思う。

筑波嶺の峰より落つるみなの川
恋ぞつもりて淵となりぬる

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