俺がお前に甘いワケ

みんなが帰った後のミーティングルーム。
少し仕事を残していたので戻ってきてみると、ぼんやりとした表情を浮かべたタマキがソファーに座っていた。
最近いろいろあったので悩んでいたのだろう。
声を掛けて話を聞いてやると、頼りないリーダーだと泣き出してしまった。
思わず腕が伸びて、抱き締めてしまった。
一瞬ぴくりと肩を震わせたが、少し間を置いてタマキも背中に腕を回してきた。

腕の中で泣いていたタマキだったがしばらく経って落ち着いたらしく背中に回していた腕を解いた。
弱っているところを見られたのが恥ずかしかったのか、タマキは顔を赤くして感謝を述べた。

「礼ならいらないぞ。参ってる部下を励ますのも上司の役目だからな」

さらりと髪を撫でると恥ずかしそうに俯いて、でも・・・と漏らす。

「どうしてもというなら受け取ってやってもいい、ただ・・・」
「ただ・・・?」
「お前の口から欲しいな」

え?と不思議そうにしているタマキの唇を親指でなぞる。
瞬間、タマキの顔が真っ赤に染まった。愛らしい。
キスしやすいように少し屈んで頬を差し出す。

「最初だからここでいいぞ」

少し笑って言ってやると、からかわないで下さいとそっぽを向いてしまった。

「タマキは可愛いな」

くるくると変わる表情に目を細める。
立ち上がって冗談だと言ってやると、安堵したようなため息が漏れた。

「隊長って優しいんですね」

俺を元気付けようとしてくれたんですよね?と付け加えられる。

「俺が優しそうに見えるか?」
「優しくて頼りがいのある隊長です」

まったく、タマキは純粋なやつだ。
俺が何を考えているかなんて、これっぽっちも気付いていない。
今だって、本気でキスさせようと思っていたところなのに。

「信用されているんだな」

くすりと笑みをこぼすとタマキは当然ですと力強く答えた。

「いつもさり気なく周りに気を配っている、そんな隊長を尊敬しています」

本当に尊敬してくれているのだろう。
大きな瞳がまっすぐこちらを見る。

「好き、だからだ」

そう小さく言って少し、俯いた。
先ほどよりも動揺した声が聞こえる。

「好きだから、こんなにも気になる」

顔を上げて顔を見て言ってやる。
タマキの顔が真っ赤になるのは今日これで何度目だろう。

「さっき部下を励ますのも上司の役目って・・・!」

うろたえるタマキの顎を捕まえる。

「いや、下心だ」

微笑んでタマキの腰に腕を回した。
タマキはおどおどと見上げてくる。

「いいだろう?」

そう言って顔を近付ける。
タマキは少し震えて、瞳を閉じた。
それを了承の合図とみなして、その唇にキスをした。

by確かに恋だった様(仮面紳士な彼のセリフ)
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