タマキに恋をしているカゲミツはきらきらと輝いているように見えた。
嬉しそうな笑顔が、それが自分に向けられたものではないと自覚しながらも嬉しくなるほどに。

オミがふとそんなことを考えたのは、そのカゲミツが目の前に座っているからだった。
かつてあんなにきらきらとしていたはずなのに、今はその輝きをすっかりと潜めてしまっている。
その理由はタマキにフラれたから。
表面上は何ともない風を装っているけれど、そんな訳はない。

無理した笑顔が痛々しい、でもそれを本人に言うことも出来ない。
傷付いたカゲミツに優しく接すれば、もしかしたらこっちを見てくれるかもしれない。
そんな不埒な考えが頭を過ぎったりもしたけれど、出来れば自力で立ち直って欲しかったのだ。
立ち直って、元の笑顔を取り戻してから二人の距離を縮めよう。
そう思っていた矢先のことだった。

タマキに恋していた時ほどではないけれど、カゲミツが自然と笑うようになっていたのだ。
やっとチャンスが巡ってきたという喜びはすぐに打ち砕かれた。
どうやら新しく好きな人が出来たらしい。
いや、恋人が出来たという方が正確か。
幸せそうに笑うカゲミツを見て安心と後悔が複雑に混ざり合う。
カゲミツが笑顔を取り戻してくれたのは嬉しい。
ただカゲミツを幸せにするのは自分だと思い込んでいた。
あの時やはり卑怯だとしても手を差し延べておけばよかったと意味のない後悔を繰り返す。

思い悩んでる間に花は色褪せてしまいましたく

その笑顔は、やっぱり自分に向けて欲しかった。

花の色は移りにけりないたづらに
 わが身よにふるながめせしまに

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