「カゲミツ、もう寝ようよ」
「いや、もう一回やるぞ」

せっかく明日は休みなのに。
ぽつり呟いたオミの声は手の中のゲームに夢中なカゲミツには届かない。
時計の短針がもう4のところに差し掛かかろうとしているのを見て、これじゃあいつもと同じじゃないかと溜め息を漏らした。

休みの日ですら仕事をしようとするカゲミツにゲームを買わないかと提案したのはオミだった。
休みの日はリフレッシュしないとと言っても渋々だったくせに、いざやってみると時間を忘れてしまう程にハマり込んでしまったのだ。
しかも二人の協力プレイが面白いらしく、オミまでそれに付き合わされてしまうのだ。
ゲームをきっかけに二人の愛情を深められればというオミの思惑はどうやら上手くいかなかったらしい。
夢中で画面を見つめるカゲミツをちらりと見遣ってからカーテンの隙間へと視線を移す。
真っ暗だと思っていたカーテンの向こうから、少し明るくなっているのが見えた。


「あー面白かった!」

ようやくゲームを手から離したカゲミツが床にごろりと転がる。
満足げに笑う顔が可愛いだなんて、惚れた弱みだなと心の中で自嘲気味に笑った。

「いつの間にかもう朝だね」

カーテンの隙間を指差すと、カゲミツがエッと驚いて上体を起こした。
そして時計を確認してあぁとうなだれる。

「またやっちまった・・・」
「面白いのは分かるけど、これじゃあ仕事してるのと変わらないよ」

しゅんとするカゲミツに寝ようかと腕を引っ張って起こす。
ごめんと小さな声で言ったところを見ると、一応反省はしているらしい。
大人しくベッドに移動して部屋の電気を消す。

「おやすみ」

目覚ましをセットしていないけど、まぁいいか。
オミがそんなことを考えながらまぶたを閉じると、服の裾が控え目に引っ張られた。

「どうしたの?」
「明日っつうか今日、別に出掛ける予定とかないよな?」
「べつにないよ」

ふわぁとオミがあくびをすると、カゲミツが少し近付いた気配がした。

「だったら・・・」

まだ眠くないんだ。
小さな声とともに伸びてきた手が背後から抱き着くように回される。
カゲミツの吐息が首にかかるほど、近い。
首にそっと触れた唇に、今日の予定を聞かれた意味が理解出来た。
先程まで感じていた眠気はすでにどこかへいってしまった。
顔だけカゲミツの方に向けてニッコリと笑顔を浮かべる。


「俺も、目が覚めちゃったみたい」

いつの間にかもう朝だね

かささぎの渡せる橋に置く霜の
白きを見れば夜ぞ更けにける

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