今日はオミがいない。 他の部隊のヘルプに呼ばれて明日の夜までは帰って来ない。 J部隊に入隊してからは本当に四六時中隣にいた。 仕事も諜報班で一緒で、同じ家に住む恋人同士なのだから自然とそうなってしまう。 オミがJ部隊に入ってから、丸一日も顔を合わせないということは初めてだった。 一人なんだから、自分のペースで仕事に打ち込める。 いつもちょっかいを出してくるオミがいないから、快適に仕事が進むはずだ。 ついでに溜まり気味の家事も少し片付けよう。 たった一日だけど悠々自適な生活を満喫しよう、そう意気込んでカゲミツは立ち上がった。 二人なら食事もちゃんと作るところだけど一人だとなんだか作る気も失せてしまう。 適当に食事を済ませて、溜まりってきた衣類を洗濯機に放り込む。 一応当番で決めてはいるものの、二人同じの不規則な生活で意味がなくなってしまっている。 休みの日に纏めてと思うものの、気付けば一日が終わっていることもしばしば。 これはちょっと考えなきゃなんねぇな、なんて思いながらオミの顔を思い浮かべた。 それからパソコンの電源を入れて、仕事を始める。 この部屋でこうやって一人で仕事をするのは初めてかもしれない。 そう思うと、いつもの部屋が急に広く見えた。 特に急ぎの仕事もないので、日付が変わった頃にはベッドに入った。 今日はやたらと時計が進むのが遅い気がする。 いつもは一瞬のように過ぎていく時間が、今日は時が止まってしまったんじゃないかと錯覚するくらいだ。 ゴロンとベッドの上で寝返りをうつと、思ったよりも広くて驚く。 当たり前だ、いつもベッドの半分はオミが使っているのだから。 眠ろうと目を閉じてもなかなか眠気はやってこない。 明日も仕事だし、いつ大きな任務が入るかわからない。 たっぷりと睡眠を取れるときに取っておかないと。 そう考えれば考えるほど、眠気が覚めていく気がする。 仕方なくカゲミツは今日一日の流れを思い出していた。 したいと思っていたことは大方出来た。 充実した一日だった、はずなのにどこか満たされない。 広いベッドの上をゴロゴロと転がる。 本当はもう理由なんて分かっている。 満たされない理由も、なかなか眠れない理由も。 ただそれを認めたくなくて、カゲミツは無理矢理まぶたを閉じる。 途端に昨日の夜オミに言われた一言を思い出して溜め息を吐き出した。 「寂しくなったらいつでも電話していいんだよ」 携帯を揺らしながらクスッと笑った顔に腹が立つ。 たった一日で寂しくなる訳ないと思っていたし、ワゴン車にいた頃は一人で過ごす夜もよくあることだった。 いつの間に、自分はこんなに変わってしまっていたのだろうか。 オミと過ごすようになってからの日々を思い出していると、じわじわと眠くなってきた。 寝てしまえば、後は仕事に行って帰ってくるのを待つだけ。 ぼんやりとした頭で明日の流れを思い浮かべたところで、カゲミツはことりと眠りに落ちた。 一人だからか、夜がこんなにも長い あしびきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む back |