恋は盲目?

「あの変態の、どこがそんなにいいんだよ」

ワゴン車で作業していると、突然カゲミツがそんなことを聞いてきた。
どこがいいかと言われると、・・・すぐに答えが浮かばなかった。

「・・・どこがいいんだろうな」

やっぱりな、というカゲミツを横目に見る。
一体キヨタカのどこにそんなに惹かれているのだろうか。
・・・あ、パソコン買ってくれるところとか?
しかし買ってもらった後はそれ相応の代償を払わされるけれど。
「ただより高いものはない」とはよく言ったもんだ。

うーん、考え込んでいるとワゴン車の扉が開いた。

「それはないんじゃないか?」

振り向くと、満面の笑みを浮かべた恋人、キヨタカが立っていた。
カゲミツはゲッという表情を浮かべている。

「俺みたいに完璧な男はそういないぞ」

少しも悪びれる様子もなく言ってのけた。
あまりの自信過剰さに言葉も出ない。
確かに背も高くスタイルだって顔だっていい。
おまけに仕事も出来る、とここだけ聞けば完璧に聞こえるだろう。
だけど完璧と呼べないのはそれを全て帳消しにするこの俺様な性格。
おまけに変態なのである。しかも、かなりの。
この前新しいパソコンを買ってもらったときなんか・・・思い出すのも嫌なくらいだ。

「何を難しい顔をしている」

ワゴンに乗り込んできたかと思えば顎を持ち上げられ至近距離で見つめられる。
顔に熱が集まっているのが嫌でも分かる。

「・・・カゲミツが見てるだろ!」
「なら隣に行こうか」

精一杯突っぱねてみても余裕の表情だ。
甘い声で囁かれると抵抗する気も失せてしまう。

「いい子だ」

車を出ようと腰を上げるとキヨタカが満足そうに頷いた。
大きな手が頭をさらりと撫でる。
心臓がどきりと跳ねた。

「明日も仕事なんだからほどほどにしろよ!」

車から降りて、扉を閉めようとすると中からカゲミツの声が聞こえた。
キヨタカは分かったと笑っているが果たしてどうなんだか。



すーっと触れるか触れないかのギリギリのところを行き来される。

「キヨタカ」
「ん、どうした?」

どうして欲しいか、分かってるくせに。
キヨタカはゆるゆるとした刺激を指で与えるだけだ。
・・・そのいじわるな指先ですら愛おしいと思ってしまうなんて。

「ヒカル」

ふいに手を止めて名前を呼ばれた。

「どうして欲しいか、言えるだろ?」

真剣な表情で見つめられて髪を撫でられた。
その姿をかっこいいと思ってしまうなんて、だいぶ重症かもしれない。
早くしっかりと刺激が欲しくてキヨタカの首に両手を回した。

「本当に俺のことが好きだな」
「勝手に言ってろ」

恥ずかしくてそっぽを向いたら優しい口付けがふってきた。
たまに見せる、この優しさがたまらない。
なんとなく、気恥ずかしくなって瞳を閉じた。


「俺様で変態だけど、案外優しいとこだってあるんだぜ」

数日後、この間の話題の返事をすると、

「そーかよ、幸せそうでいーこった」

とカゲミツは呆れたようなような顔を見せたのだった。

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