それはある日のデート中のことだった。 信号待ちをしている車を見て、カゲミツが突然声を上げた。 「うわ、あの車かっこいいなぁ・・・」 カゲミツの目線を辿ってみると、周りとは明らかに違う車が一台。 長い間大事に使われているのが一目でわかる左ハンドルだ。 「カゲミツって車好きだったのか?」 目を輝かせてその車を眺めるカゲミツに問い掛ける。 二人で一緒にいるようになって結構な時間が経つが、カゲミツがこんなに興味を示すのは初めて見たような気がする。 「古い外車が好きなんだ」 「そうだったんだ」 雑誌とか見るくらいなんだけどな、そう頬をかきながらカゲミツは付け加えた。 それから数ヶ月が経ったある日のことだった。 二人でデートしようと言われたものの、カゲミツは11時に家に行くとしか教えてくれなかった。 いつもはどこに行って、何をしようと話をしてくれるのに。 不思議に思いながらも家で待っていると、約束の5分前にインターホンが鳴った。 照れたように頬をかいたカゲミツの手から何やら音が聞こえる。 「今日はドライブに行かないか?」 「車は?」 「レンタルしてきた」 行こうとカゲミツがタマキの手を取る。 そのままマンションの前まで来ると、目立つ外車があった。 「これか?」 「あぁ、乗ってみたかったんだ」 タマキを助手席に乗せ、カゲミツも運転席に座る。 そういえば運転するカゲミツを横から見るのは初めてだ。 その姿が様になっていてかっこいい。 「左ハンドルだから安全運転でいくな」 そう言ってゆっくりと発車させた。 しばらく無言だった二人だけどタマキがおもむろに口を開いた。 「カゲミツ、似合うな」 「へ?」 「外車」 一瞬驚いた顔をしたが、すぐに満面の笑みに変わった。 「いつかこんな車が欲しいと思ってるんだ」 「うん」 「だからタマキにそう言ってもらえるとすげー嬉しい」 そうはにかんだカゲミツにタマキまでも何だか幸せ気分だ。 「いつか車を買ったとき、」 「うん」 「タマキが最初に助手席に座って欲しい」 それはずっとこの関係が続いてると思ってくれているということで、タマキは嬉しくて俯いてしまった。 幸せ過ぎて、怖いくらいだ。 「タ、タマキ?」 なかなか反応を示さないタマキにカゲミツがおろおろと声を掛ける。 信号待ちの間に何か悪いことを言ってしまったのかとそわそわとタマキの様子を窺っている。 言葉に出してもこの気持ちを全部伝えられる気がしない。 だから身を乗り出して、白い頬にひとつ口付けた。 一番最初は君に |