深夜だというのにカゲミツとオミは自宅でパソコンと向かい合っていた。
静かな部屋に響くのはカタカタとキーボードを叩く音だけ。
帰宅してからもう数時間経つというのに、ろくに会話もしていない。
おもむろにオミが立ち上がってテーブルに置きっぱなしだったチョコレートの袋に手を伸ばした。

「俺にもひとつ取ってくれ」
「これが最後の一個だったんだけど」

困ったように眉を寄せてオミはカゲミツに近付いた。

「ほら、あーん」
「は?」

近過ぎる距離で口を大きく開いた。
とけかけたチョコレートが舌の上に乗っかっている。

「欲しいんでしょ?」
「お前が食ったもんなんかいらねー」
「ほんとは欲しいくせに」

出来るだけチョコをとかさないように。
気をつけながらオミは笑う。
指が慣れた手つきでこめかみから頬をつたって顎を掬い上げた。

「カゲミツには拒めないよ」
「なんでだ」
「俺のことが大好きだからね」

反論するために開いた口はオミのものによって塞がれた。
甘い甘いチョコレートが口の中に流れ込んでくる。

「んっ」

いつの間にか肩に回された腕を振り払うどころか、背中に手を回したのはもっとと求めた訳ではない。
チョコレートがなくなり、かすかにその甘さだけを残す頃にようやく唇を離した。
向かい合っていた体制は知らないうちにソファーに押し倒される格好になっていた。

「ほら」
「ちげーよ、糖分補給しただけだ」
「俺もカゲミツとキスして糖分補給出来たよ」
「そっちじゃねー」

そうは言ってみても、オミはクスクスと楽しそうに笑うだけだ。
ちらりとテーブルに置かれたパソコンに目をやってから視線を戻した。

「カゲミツ、もっと甘いものが食べたい」

普段はしないくせに、こんなときだけ甘えるように肩に顔を寄せてくるなんて反則だ。
もう持って帰ってきた仕事はほとんど終わっているし、それはオミも同じことだろう。

「甘さは知らねーけど、糖分補給したいんだろ」

精一杯の誘い文句が恥ずかしくて、瞳をぎゅっと閉じた
そのあと降ってきたキスの嵐がくすぐったくて、ゆっくりと両腕をオミの背中に回した。

糖分補給
(あまい あまい きみで)

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