「では各自休憩を取ってくれ」

午前中のミーティングが終わり、キヨタカがそう告げた。
ふわーと体を伸ばすカゲミツとデスクに突っ伏すヒカル。
そんな諜報斑を横目に見ていると、ツンツンと腕を突かれた。

「タマキちゃん、一緒にお昼ご飯食べよ?」

声の方に視線を移すとコンビニの袋を持ったアラタがニッコリと微笑んでいた。

「今日は天気がいいから屋上で食べたいな」

アラタの提案にタマキも頷き立ち上がった。
あたりを見回すとみんな雑談に花を咲かせている。
早くとせかすアラタに腕を引かれミーティングルームを出た。

一歩、屋上に足を踏み入れると気持ちの良い秋晴れが広がっていて、大きく息を吸い込んだ。

「気持ちいいでしょ?」

クスクスと年相応な表情で笑うアラタに笑顔で答える。
壁に背を預け、二人並んでコンビニのおにぎりを頬張る。

「こういう日は手作りの弁当が食べたいな」
「僕、手作りのお弁当なんか食べたことないよ」
「そっか、じゃあ今度作って来てやるよ」

料理は得意じゃないから味は期待するなよとタマキが笑う。
のんびり穏やかな午後のひとときだ。
最後の一欠けらを食べ終わったアラタにタマキが手を伸ばした。

「ご飯粒がついてるぞ」

口元に寄せようとする手をアラタが制する。
その顔はぷくりと頬を膨らませて不満そうだ。

「タマキちゃんが取ってよ」

だからともう一度伸ばしかけた手をアラタが掴む。
意味がわからないと首を傾げたタマキにアラタがニコリと笑った。

「タマキちゃんのお口で取って」

いくら恋人だからと言っても白昼堂々と、それもビルの屋上とはいえ野外で出来る訳がない。
ねぇ早くとアラタは自分の唇を指差す。
これは体よくキスをせがまれているようだ。
恥ずかしくなって顔を赤面させてブンブンと首を横に振る。
家で二人っきりのときに勇気を振り絞っても出来るかどうかわからない。
しかしアラタはあろうことか膝に乗り上げて首に手を回してきた。
お膳立ては完璧、これはやらない訳にはいかない。
覚悟を決めてぎゅっと目をつむったとき、ガチャリと音を立てて屋上のドアが開いた。
驚いてパッと目を開くと、同じく驚いたように目をパチパチと瞬かせるトキオがいた。
手にはタバコを持っているので吸いに来たのだろう。

「あ、俺邪魔した?」

口をパクパクさせてと慌てるタマキに代わりアラタが冷静に答えた。

「リーダー、野暮な質問だよ」

年下だというのに全く動じた様子はない。
トキオはそうだよなと呟いて屋上を出て行った。

「さぁ、早く取って?」

甘えるように上目遣いで見られて断れるはずもなく。
ゆっくりと目を閉じてアラタの唇に自分のものを重ねた。

「ありがとう」

そう言ってクスッと笑ったアラタの顔がもう一度近付いてきて、トキオに悪いと思いながら再び目を閉じたのだった。

ある晴れた秋の日

ついった診断メーカーより
アラタマさんにオススメのキス題。シチュ:人気のない場所、表情:「赤面」、ポイント:「膝抱っこ」、「相手にキスを迫られている姿」です。

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