「休日っていうのは、働かない為にあると思うんだけど?」 「ならこんなところに座ってないで、どっか行ってくればいいだろう」 パソコンから視線を外さずに答えたカゲミツにオミがふぅと息を吐き出す。 分かってないね、カゲミツはという呟きは本人の耳に届くことなく消えた。 ナイツオブラウンドが解散し、オミがJ部隊に入隊した。 それから二人の関係がただの幼なじみから恋人へと変化するのにそう時間は掛からなかった。 二人の関係は確かに変わった。 しかし二人の距離はというと、そう大きく変わった訳ではなかった。 以前より楽になったといっても諜報の仕事は大変だ。 ワゴン車に篭り、パソコンに向き合ったまま朝を迎えることもしばしば。 "恋人らしいこと"もたまにはするけれど、それもなかなかままならない。 二人の関係は"恋人"だけど、圧倒的に"同僚"としての時間が多いのだ。 だからたまの休みくらいは仕事を忘れて恋人の時間を楽しみたいのに、どうやらカゲミツはそんなオミの気持ちに気付いてはいないらしい。 「ねぇカゲミツ、お腹空かない?」 ヒカルにおいしいラーメン屋さん教えてもらったんだ。 そう続けようとしたオミの言葉をカゲミツは容赦なく遮る。 「空かねぇってか今それどころじゃねぇ」 仕事に集中したいのはわかる。 いいところで邪魔をされたくない気持ちだってよくわかる。 だけどそれじゃあつまらない。 ソファーでクッションを抱えていたオミが、スッと立ち上がった。 そのままパソコンに向き合ったカゲミツの背後に回り、キーボードを叩く指にそっと触れる。 「邪魔」 「邪魔じゃない」 手の甲に自分のものを重ね優しくなぞると、イライラとしたカゲミツと目が合った。 「オミ、」 「それは明日いっぱいできるだろ?」 それでもカゲミツの不満げな表情は変わらない。 肩に顔を乗せ、耳元に吹き込むように囁く。 「だから仕事なんかしてないで、俺に構ってよ」 「・・・ったく、仕方ねぇなぁ」 パタンと音を立ててカゲミツがノートパソコンを閉じる。 その横顔が少し赤くなっていて、オミは口元を緩めた。 二人の休日はまだまだ始まったばかり。 こんな二人の休日 back |