今日はタマキちゃんのおうちにお泊りだ。
もう随分と慣れたもので、必要最低限の荷物だけを持って二人で家路に着いた。

カチャリとドアを開くと、温かくて安心出来るタマキの匂いが体を包む。
楽しくなって鼻歌を歌いながら部屋まで歩く。

「今日は機嫌がいいな」
「タマキちゃんちにお泊りだからね」

振り向いて、見上げて。
ニッコリとした笑顔は作り物ではなく心からのものだ。
タマキもそれが分かったのか、顔を少し赤らめてふいと逸らす。

「僕はこんなに嬉しいのに、タマキちゃんは嬉しくないの?」

一歩距離を詰めて、下から覗き込んで。
少し大袈裟にシュンとしたのは構って欲しいからだ。

「・・・そんな訳、ないだろ」
「じゃあ目を見て言って?」

タマキのシャツをぎゅっと掴む。
声には少しの寂しさを織り交ぜて。
ねぇ、と小さく急かすとゆっくりと口を開いた。

「俺だって嬉しいに決まってるだろ」

少し不機嫌そうなのは恥ずかしいからで。
言ってすぐ目を逸らしてしまったけれど、赤くなった耳がタマキの気持ちを雄弁に語っている。
思わず抱きしめたい衝動に駆られたけれど、なんとか押し止めて指を結んで部屋に入った。

食事を済ませ、アラタが先に風呂に入るといつものように脱衣所にはタマキのシャツが置かれていた。
自分より少し背の高いタマキの、サイズの合わないシャツが。
それでもアラタはそのシャツを着るのが好きだった。
畳まれていたそれを広げてそっと腕を通すと、タマキの家に来たのだと実感出来る。
余った裾が以前よりも短くなったのを見て、クスリと笑みがこぼれた。

交代で風呂に入ったタマキを待ち、二人一緒にひとつのベッドに入る。
いくらアラタが小さいとはいえ、さすがに少し狭い。

「タマキちゃん、もっとくっついて?」
「こっちにまだ余裕がある」
「今はいいけどこれから僕、もっと大きくなるよ?」

だから練習、と向かい合ったタマキの背中に腕を伸ばす。
二人の距離が、ぐっと近くなる。

「このシャツも、そのうち入らなくなっちゃう」
「そんなの、まだ先の話だ」

しかしタマキの予想は外れ、スクスクと成長しシャツが入らなくなるのもそう遠い話ではなかったのだった。

あまる、そで

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