おねがい、おねがい、きづいてよ!

タマキちゃんはなーんにも分かっていないんだ。

みんなでミーティングルームでわいわいとトランプをしている昼下がり。
ダウトをして、やっぱり負けてしまったカナエ君がみんなに笑われている。

「お前分かりやす過ぎだろ」
「本当にな」

カゲミツ君の一言に、タマキちゃんが同調して笑った。
あ、カゲミツ君がタマキちゃんの笑顔を見て赤くなった!
あんなに分かりやすいのに、気付かないなんてタマキちゃんは鈍感だなぁ。
まぁカゲミツ君は行動に出ないからね。
だから"へたれ"って言われるんだよ。
カナエ君はみんなから散々からかわれて困ったように笑っている。
みんなを見ているようで、タマキちゃんとカゲミツ君をじっと見つめている。
いつ二人の間に入ろうか、様子を伺っているみたいだ。
カナエ君って意外とあなどれないんだよね。

「タマキ君、笑い過ぎだよ」

ふふふ、やっとカナエ君が動き出した!
二人でいい感じに話してたのに邪魔されたのでカゲミツ君の表情が険しくなる。
カゲミツ君はカナエ君に対して敵意むき出し過ぎると思うんだ。
その理由が分からないタマキちゃんはいつも不思議そうな顔をしている。
まさか、カゲミツ君が自分のことを好きだなんて思わないよね。

そうこうしているうちに隊長が仕事だと言いながらやってきた。
それを合図にみんなが表情を変え、自分の席に着いた。
みんなを眺めていた僕も、自分の席に座る。
全員が席に着いたのを確認してから、隊長は次の任務について話し出した。

任務の確認が終わり、みんなが部屋を出ようとしていると、隊長がタマキちゃんに話しかけた。
カゲミツ君やカナエ君が出て行ったのを見計らって話し掛けるなんてさすが隊長!
何を話してるのかは聞こえないけど、タマキちゃんの顔が真っ赤になっている。
あ、隊長がタマキちゃんの顎を挟んだ!

「タマキちゃーん、一緒に行こう?」

隊長の顔がタマキちゃんに近付く前に声を掛ける。
(僕が止めなかったら、きっとこのままキスされてたよ?)
そんなこと考えながらタマキちゃんに腕を絡める。

「気をつけてな」

僕の存在に気付いた隊長はパッと表情を変えてにこりと笑った。
タマキちゃんにこんな顔させといて、よく言うね。
でもそんなことは表情に出さずはーい!と元気よく返事をした。
赤い顔のタマキちゃんには、気付かないフリで。
タマキちゃんに腕を絡めたまま部屋を出る。

「タマキちゃん、他の人に簡単に触られちゃダメだよ」

立ち止まって先に行こうとするタマキちゃんの腕を引っ張る。
ははは、なんて笑いながらどういうことかなんて聞いてくるタマキちゃん。

本当、無自覚なんだから。

タマキちゃんの周りはオオカミばっかりなのに、全然気付いていない。
そして、そのオオカミの中に僕が混じっていることも。

「も〜、わかってないんだから!」

むっと膨れる表情を見せて、少しだけ、背伸びをした。
ちゅっと音を立ててから、かかとを床につける。
タマキちゃんは、真っ赤な顔で頬を押さえている。

「タマキちゃんは僕のだからね」

鈍感だって分かっているけど、そろそろ僕の本当の気持ちにも気付いて欲しいな。
僕の"好き"の意味を。

「早く行かないと置いていかれちゃうよ!」

僕はそう笑って階段を駆け下りた。

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