学パロ番外編です
タマキは大学を卒業し、同じ学校で働いています




「先生、キスとチューの違いって何ですか?」

それはある休憩時間、一人の生徒に言われたことがきっかけだった。
その時は曖昧にお前達にはまだ早いとか言ってごまかしてみたものの。
そう言われると妙に気になってしまい、放課後国語科準備室でテストの採点をしているキヨタカに声を掛けた。

「タマキはどう思ったんだ?」
「チューは子供でキスは大人っていう感じかなと思いました」
「なるほど」

赤ペンを置いてこっちを向いたキヨタカの顔を伺う。
職場で話すような内容ではなかったかもしれない。
スッと立ち上がり近付いて来たキヨタカに無意識のうちに体が強張る。

「俺の考えはこうだ」

壁に背中を押し付けられ、手は縫い付けられ。
この体制はマズイと思ったのもつかの間、軽く唇を重ねただけでキヨタカはあっさりと採点に戻った。
・・・物足りないなんて、全然思ってないぞ。
しばらく黙って背中を眺めてみたものの、キヨタカの言いたいことが分からず自分から口を開いた。

「あの、どういうことですか?」
「分からなかったか?」
「ハイ・・・」
「なら今夜じっくりと教えてやろう」

まだ勤務時間だと付け加えた言葉に頷いてから気が付いた。
今日は金曜で明日の予定は何もない。
きっと今みたいに実践で教えられるんだろうな。
どきどきと高鳴る胸を抑えて残りの仕事に励んだ。

食事を終え風呂にも入り、先週末振りに訪れた恋人の家の寝室でキヨタカが風呂上がりを待っていた。
仕事が終わり二人きりになってからもまだ答えを教えてくれていない。
キスとチューの違い、か。
昼間の生徒の言葉がぐるぐると頭を回り始めたとき、寝室のドアが開いた。

「待たせたみたいだな」

ベッドの上でごろりごろりと寝転がるタマキを見てキヨタカが笑う。
間違ってはいないけど、口に出されると恥ずかしい。

「それよりさっきの答え、教えてくれませんか?」
「なんの話だ?」
「キスとチューの違いですよ」

するりとベッドに入って膝を立て覆いかぶさってくる。
そうだったな、なんて言いながら顔をこちらに向けたまま器用に電気を消した。
かちゃりとサイドテーブルに眼鏡を置いたと思えば、手の平が優しく頬を撫でる。
答えは?なんて言いながらも頬を優しくなぞる指に意識が集中してしまう。
髪を指で遊ばれ、名前を呼んでもキヨタカは何も答えない。
なかなか落ちてこない唇に焦れて自分から首に腕を回した。

「そんなに焦らなくてもいいだろ?」
「焦ってません!」

いつも性急に求めてくるくせにと悪態をつこうとしたら、噛み付くように唇を塞がれて目を見開く。
後頭部をガッチリと固定されて顔を動かすことが出来ない。
そんなことしなくたって逃げる訳ないのに。
口を開いて舌を絡めてお互いの唾液が混ざり合う。
そんなキスを繰り返して、頭がぼうっとし始めた頃にキヨタカの顔が離れた。

「これでも分からないか?」
「ど、ゆこと、ですか?」

荒い呼吸のまま尋ねるとキヨタカがフッと笑ったのが聞こえた。
耳元に唇を寄せられて無意識に体がびくりと跳ねる。

「昼のがチューで、今のがキスだ」

触れるだけがチューで、深いものをキスと呼ぶってこと?
体を起こし、タマキの答えも正確だろうと言って着ていたパジャマのボタンを外し始めた。
何となく分かった、けどもっとちゃんと教えて欲しい。
鎖骨のあたりに這わしている指に自分の手を重ねて止めさせた。

「まだ分からないのでもっと教えてくれませんか、先生?」
「・・・仕方ないな」

高校時代の自分を思い出し、ねだるように囁くととろけそうなほど熱いキスが降ってきた。

昼のチューと夜のキス
(答えなんていいからもっと"キス"を!)

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