同じ茶碗にいっぱいなタマキに対し七分目ほどしか入っていないカゲミツ。
今日はカゲミツの食事当番の日だけど、全体的に量が少ないのが目についた。
実は一緒に暮らし始め、薄々気付いてはいたのだけどカゲミツは少食だ。

「カゲミツ、もっと食えよ」

だからそんなに細いんだと腕を指差した。
諜報班で戦闘に参加することはないけれど、少し不健康に感じるくらいだ。
それこそタマキが簡単に押し倒せてしまいそうなくらいに。
それでもカゲミツは手を振る。

「いや、俺も結構食ってるし」
「米の量が明らかに違うだろ」

指摘するとカゲミツが困ったように頬をかいた。
やはり意図的に量を少なくしていたようだ。

「まだまだ食える年頃だろ?」
「や、まぁそうなんだけどさ・・・」

瞬きを繰り返しながらあちらへこちらへと目線を泳がせる。
何か理由があるようだ。
カゲミツ、と名前を呼ぶと、観念したように話し始めた。

「笑われるかもしんねぇけど」
「笑わないから」
「約束だぞ?」

念を押すように何度も確認するので右手を差し出した。

「指切りしよう」

面食らった顔をすこし赤く染め、おずおずとカゲミツも右手を差し出した。
ゆっくりと外れないようにぎゅっと絡める。
最初は見つめ合っていたけれど、恥ずかしくなったのかカゲミツが視線を下に向けた。

「・・・タマキを見てるだけで、腹いっぱいになるんだ」

ぽつりと小さな声だったけれど、二人しかいない部屋の中ではしっかりと聞こえた。
しかしタマキは何も答えない。
やっぱり気持ち悪かったと後悔して顔を上げると、顔を真っ赤にして固まる姿が目に入った。

「タマキ?」
「あぁ、ごめん、大丈夫だ」

何が大丈夫なんだ?
やっぱり気持ち悪かったのか?
不安にゆらゆらと揺れる瞳を見て、タマキがコホンと咳ばらいをした。
そして身を乗り出して、絡めたままの指をグッと引っ張る。
うわっと声を上げて近付いて来た唇に自分のものを押し当てた。



「でももう少し食べろ、俺が心配だ」

唇を離すと顔を真っ赤にさせたカゲミツが驚いた表情を見せた。
なんとなくどこか気恥ずかしいまま二人とも座り直し、タマキが口を開いた。
その言葉にカゲミツがコクンと頷く。

「明日は俺が好きなものを作ってやるよ」

手の込んだものは作れないけどと付け加えると、カゲミツは緩く首を横に振った。

「タマキが作ったものなら何でも大好きだ」

ふわりと笑ったその顔に今日何度目かになる胸キュンを感じたのだった。

君に胸キュン

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