ちょっと疲れたから、少し休憩でも。
そう思ってソファーに座ったのがいけなかった。

「タマキちゃん、タマキちゃん!」

ゆらゆらと肩を揺すられる感覚が心地好い。
まどろんだ頭でゆっくりまぶたを開くと、どうやらアラタのようだった。
起きなきゃと思うのに、眠気がなかなか覚めてくれない。
そんなときだった。

「早く起きないとキスするよ?」

クスリと笑って言った声は驚くほど大人びていて一気に頭が覚醒した。

「アラタ?」
「なんだ起きちゃったの?つまんないの」

とは言うもののアラタはタマキの太股の上に乗っていて、顔までの距離はおよそ10センチ。
この前、アラタを家に呼んだときの出来事が嫌でも思い出されてしまう。

「最近様子がおかしいぞ」
「純粋な少年を演じるのに飽きちゃった」

言葉とはアラタは裏腹にいかにも子供っぽく笑う。
信じたくなかったけど、この前可愛く見えるように作っていると言っていたのは本当なのかもしれない。

「近すぎて話しづらくないか?」

だから上からどいて欲しいと目で訴えてもアラタはニコニコとしたまま動かない。

「前と同じ距離なのに、どうして"近すぎる"の?」

確かにあんなことされるまではいつもの光景だった。
何も言い返せずにタマキが押し黙っていると、アラタが手を伸ばした。
あの時と同じように、布越しにタマキの胸に触れる。

「こんなことダメだ!」
「どうして?」
「どうしてって・・・こんなの不健全だろ」
「今が健全で、今までの方が不健全だったんだよ」

アラタはそう言って楽しそうに指で刺激を与えてくる。
このままではあの時のようになってしまう。

「アラタ!やめろ!」
「えータマキちゃんも感じてたくせに」

表情は子供のまま、それでも纏う雰囲気は妙に大人っぽくアラタが笑った。
その間も器用に指を動かすことは忘れない。

「だからてっきりOKだと思ったのに」
「そんな訳ないだろ、勘違いだ」
「勘違い?勘違いさせたのはタマキちゃんだよ」

目をスッと細め、温かい手が頬をなぞった。
それから聞いたこともない低い声で囁いた。

「お泊りするのに下心のない男なんていると思ってたの?」

男はみんな、オオカミなんです

by確かに恋だった様(純粋じゃない彼のセリフ)
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