付き合い始めた頃、二人で街を歩いているとやたらと注目を浴びている気がしていた。
意識して"友人"の距離を保っているから二人の関係がバレてる訳ではないはずだけど。
カゲミツには言えず、ずっと一人で考えていた。
知らず知らずのうちに"恋人"の雰囲気が出てしまっているのだろうか。
しかし理由は案外簡単なことだった。
たまたま隊長と二人で街を歩いていると、カゲミツと二人でいるときのように妙に視線を感じた。
カゲミツには聞けないけれど、相手が隊長ならば聞きやすい。
意を決して口を開いた。

「さっきから妙に注目されてる気がするんですけど・・・」

ひそひそと。
小声で尋ねると隊長は何をといったように目を丸くした。

「当たり前だ、こんな男前が歩いているんだからな」

平然と言ってのけた様には少し驚いたけど、最近抱えていた小さな悩みが解決された。
カゲミツは話さなければ綺麗な顔をしていると部隊の中でも評判だ。
そんなカゲミツが街を歩いていたら注目を浴びるのも当然だ。
自覚したら嬉しいような、恥ずかしいような、本当に俺でいいのかといった気持ちがむくむくと膨れてくる。
そんなある日のことだった。
夕食は外に行こうと約束していたけれど、ちょっとした予定が入り駅前で待ち合わせることになった。
デートの時は大抵カゲミツが家まで迎えに来るから外で待ち合わせなんて付き合い始めてから、初めてかもしれない。
わくわくとした気持ちで急いで待ち合わせ場所に向かうと、カゲミツはもうその場所に立っていた。
ただし横には見知らぬ二人の女の子が立っていて、カゲミツはすこぶる迷惑そうな顔で対応しているのだけど。
急ぐ足を止めてそっと様子を伺う。
もちろん浮気なんて疑っていない、けど。
そっと聞き耳を立てると案の定遊びに行こうよと誘われているようだった。
無下に断ることも出来ずなカゲミツは困惑した表情だ。

「彼女じゃないなら一緒に行こうよー」
「そんなこと言っても無理だって・・・」
「友達とはいつでも遊びに行けるじゃん」

ああ言えばこう言うというように女の子達は簡単に諦めるつもりはないようだ。
チラチラと時計を気にするのが見えて、ようやくカゲミツの前に出た。

「お待たせ」
「タマキ!じゃあ俺らもう行くから」

姿を見るなり駆け寄ってきて女の子達に一言告げて歩き出した。
よっぽど困っていたのだろう。
しかしさっきの会話の中でひとつだけ気になることがあった。
もちろん自分は女じゃないから彼女、ではないけれど。
カゲミツが急に話し掛けられてなかなか離してくれなかったと懸命に弁明しているのを軽く聞き流す。
ささくれ立った心はそう簡単に抑えることが出来ない。
予約してある店まで無言で歩き、個室に案内されてオーダーする前になってようやく口を開いた。

「さっきの子達、可愛かったな」
「タマキまだ怒ってんのか?」

怒っているというよりは少しショックだった、という方が正しいかもしれない。
だからこそ、ポケットにあったものをそっとテーブルの上に置いた。
綺麗にラッピングされたそれをカゲミツの前に差し出す。

「開けて」
「お、おう・・・」

カゲミツは不安そうに瞬きを繰り返しながら目の前のものを手にした。

「これ・・・」
「見えないけど俺も同じものをつけてる」
「え?」

カゲミツがようやくそれから顔を上げた。
手の中にあるのはシンプルなシルバーのペンダントだ。

「俺達なかなか人には言えない関係だろ?だから、」

さりげなく恋人だって主張しちゃっていい?
そう尋ねるとカゲミツが真っ赤な顔で呟いた。

「・・・いいに、決まってんだろ」

言うなり隣に移動してきて力いっぱい抱きしめられて、場所も忘れてカゲミツの胸に身体を預けた。

*

「タマキのやつも見せてくれよ」
「うちに帰ってから、な」

恋人だって主張しちゃっていい?

by転寝Lamp様(恋人初心者たちの五つの悩み)
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