デートにも行ったし、二きりのときに手を握ることにも慣れてきた。
となれば次はキスを、となるのは当然のことだと思うんだ。

タマキの恋人になって一ヶ月とすこし。
ゆっくりと自分たちのペースで二人の関係を深めてきた。
カッコ悪いところだってたくさん見せてしまったけれど、タマキはどんな姿も優しく受け入れてくれた。
だから今度こそカッコ良いところを見せたいんだけれど。
キスっていつ、どんなタイミングでするもんなんだ!?

キスのタイミングがわからない!

明日は二人揃って休みだという金曜日の夜。
ゆっくりしていけよと言うタマキの言葉に頷き、二人でレンタルショップでDVDを借りてきた。

「話題の映画で見たかったんだ」
「へぇ、そうなんだ」

映画には疎いのでセレクトはすべてタマキに任せた。
借りてきたDVDのパッケージを開きながらタマキが嬉しそうに笑うのを眺める。
せっかくだし暗くしようかと言うので、部屋の照明を落とした。
新作情報が数分流れたあと、ようやく本編が始まった。

「お、やっと始まるな」

タマキがよしとソファーに座り直す。
一体どんな映画なんだろうか。
タマキが見たいということは、アクション映画だろうか?
どきどきとした気持ちでテレビを眺めていると、そこには一人の女性が映し出された。
食い入るようにテレビを見るタマキを盗み見る。
アクションかと思っていた内容は、予想に反してラブストーリーだった。
物語も終盤に差し掛かったとき、ふとタマキの指がカゲミツのものに触れた。
軽く力を込められた指をぎゅっと握り返す。
ちらりとタマキを見ても、目はテレビに向けられたままだ。
キスしそうな雰囲気なのに、なかなか出来ない二人が、自分の気持ちにリンクする。
もどかしくて、甘酸っぱい。
いつの間にかカゲミツも映画に夢中になっていた。
不器用な恋人達が一歩踏み出し、照れながらもキスを交わす姿に胸がきゅんとしてしまった。
幸せな気持ちでいっぱいのままエンドロールは流れていく。
タマキは終わったというのに、まだテレビに釘付けのままだ。
すべてが終わりメニューになったのを見て、ようやくタマキが視線をこちらに向けた。

「いい映画だったな」
「感想はそれだけ?」
「え?」
「俺達、付き合ってるよな?」

タマキの質問の意図がわからずに戸惑いながらも頷く。
暗くて表情が見えにくかったので、電気をつけようとしたらその手を捕まれた。

「こういうときに、キスするんじゃない?」

首に腕を回されて心臓がバクバクと音を立てる。
画面の光を頼りにタマキを見ると、目を閉じてじっとしていた。
据え膳とはまさにこのことだ。
緊張から微かに震える手を隠してタマキの腰に腕を回す。
肩を掴む手にぎゅっと力を込められたのを合図に、ゆっくりと顔を近付けた。
一瞬、軽く触れただけで幸せが体中を駆け巡っていく。
目を開くとタマキも幸せそうに笑ってくれていた。

「もう一回」

要望にお応えしてもう一度唇を重ねる。
数秒後、ゆっくりと顔を離すとタマキが肩に顔を埋めた。

「俺達付き合ってるんだから、いつでもいい」

だから次はカゲミツから、と照れた声が聞こえてタマキの体を力いっぱい抱き締めた。

「じゃあもう一回してもいいか?」
「確認しなくてもいいかっ、」

今度はタマキが言葉を言い終える前に少し強引に唇を重ねた。

by転寝Lamp様(恋人初心者たちの五つの悩み)
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