て の ひ ら

「次の任務の事なんだが・・・」

新たな任務について説明しているキヨタカをぼんやりと眺める。
真剣な眼差しで的確な指示を出す姿は、タマキの理想の姿だ。
話を聞くふりをして、キヨタカの横顔をちらち盗み見る。
普段はあまり見せることのない真面目な表情に、すこし、胸が、どきりとした。
いけない、いけない!
今は大事な任務の説明中、そんなことを考えてる場合ではない。
タマキは少し軽く頭を振って、もう一度話に意識を戻した。

ミーティングが終了し、いざ任務へと向かう途中にキヨタカから声を掛けられた。

「俺にみとれるのは構わないが任務の内容は分かっているな?」

「だ、大丈夫です!」

顔を見ていたことがバレていて、一気に顔に熱が集まる。
みんなが出て行った後でよかったと内心ホッと息を漏らす。

「まぁタマキのことだから大丈夫とは思うが・・・頑張ってこい」

「はい、隊長の期待に応えられるよう頑張ります!」

「俺の期待、な」

意地悪そうな笑みを浮かべ、"俺"の部分を強調してくる。
一度ひいた熱がまた顔に戻ってくるのが自分でも分かる。

「もう、からかわないでください!」

タマキは顔を真っ赤にして、先に出た仲間に続いた。


キヨタカの事前の指示のおかげで任務は無事成功に終わった。
報告書を書こうと、タマキは一人ミーティングルームへ向かった。

一人で机に向かってにらめっこしていると後ろから声をかけられた。

「さすが俺が見込んだだけはある」

驚いて後ろを振り返ると、入り口にキヨタカが立っていた。

「俺の期待に応えたからには、ご褒美をやらないといけないな」

何かを含んだような笑みでこちらへ近付いてくるキヨタカ。
よからぬ危険を察知し、逃げようとしたけれどキヨタカの動きの方が一歩早かった。
逃げようと席を立った隙に長い腕が腰に回される。

「ちょっ・・・隊長!」

「二人でいるときは名前で呼ぶ約束だろ?」

「・・・っ!!!!」

瞬時に顔を赤くするタマキにキヨタカは可愛いなと囁き髪に指を絡める。
気付けばタマキは机の上に座らされていて、顎を掴まれていた。
至近距離でみつめられて、顔が一気に熱くなるのが分かる。

「タマキは本当に俺のことが好きだな」

「そんなことっ・・・!」

「そんなことないか?」

ふざけた調子から一転、急に真剣な声色で問いかけてくるのがズルイ。
じっと目を合わせているのに、顔色ひとつ変えない余裕な表情もズルイ。

「・・・強引過ぎる・・・」

「そんな俺がいいんじゃないのか?」

諦めたように目を伏せたタマキにキヨタカは満足げに笑い、唇を重ねた。

いつもてのひらの上で転がされてばかりだけど、意外とこういうのも悪くない。
だんだん激しくなる口付けを受け止めながらタマキはそう思ったのだった。

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