▽02/20 01:23
デートにも行ったし、二きりのときに手を握ることにも慣れてきた。
となれば次はキスを、となるのは当然のことだと思うんだ。
タマキの恋人になって一ヶ月とすこし。
ゆっくりと自分たちのペースで二人の関係を深めてきた。
カッコ悪いところだってたくさん見せてしまったけれど、タマキはどんな姿も優しく受け入れてくれた。
だから今度こそカッコ良いところを見せたいんだけれど。
キスっていつ、どんなタイミングでするもんなんだ!?
キスのタイミングがわからない!
明日は二人揃って休みだという金曜日の夜。
ゆっくりしていけよと言うタマキの言葉に頷き、二人でレンタルショップでDVDを借りてきた。
「話題の映画で見たかったんだ」
「へぇ、そうなんだ」
映画には疎いのでセレクトはすべてタマキに任せた。
借りてきたDVDのパッケージを開きながらタマキが嬉しそうに笑うのを眺める。
せっかくだし暗くしようかと言うので、部屋の照明を落とした。
新作情報が数分流れたあと、ようやく本編が始まった。
「お、やっと始まるな」
タマキがよしとソファーに座り直す。
一体どんな映画なんだろうか。
タマキが見たいということは、アクション映画だろうか?
どきどきとした気持ちでテレビを眺めていると、そこには一人の女性が映し出された。
食い入るようにテレビを見るタマキを盗み見る。
アクションかと思っていた内容は、予想に反してラブストーリーだった。
物語も終盤に差し掛かったとき、ふとタマキの指がカゲミツのものに触れた。
軽く力を込められた指をぎゅっと握り返す。
ちらりとタマキを見ても、目はテレビに向けられたままだ。
キスしそうな雰囲気なのに、なかなか出来ない二人が、自分の気持ちにリンクする。
もどかしくて、甘酸っぱい。
いつの間にかカゲミツも映画に夢中になっていた。
不器用な恋人達が一歩踏み出し、照れながらもキスを交わす姿に胸がきゅんとしてしまった。
幸せな気持ちでいっぱいのままエンドロールは流れていく。
タマキは終わったというのに、まだテレビに釘付けのままだ。
すべてが終わりメニューになったのを見て、ようやくタマキが視線をこちらに向けた。
「いい映画だったな」
「感想はそれだけ?」
「え?」
「俺達、付き合ってるよな?」
タマキの質問の意図がわからずに戸惑いながらも頷く。
暗くて表情が見えにくかったので、電気をつけようとしたらその手を捕まれた。
「こういうときに、キスするんじゃない?」
首に腕を回されて心臓がバクバクと音を立てる。
画面の光を頼りにタマキを見ると、目を閉じてじっとしていた。
据え膳とはまさにこのことだ。
緊張から微かに震える手を隠してタマキの腰に腕を回す。
肩を掴む手にぎゅっと力を込められたのを合図に、ゆっくりと顔を近付けた。
一瞬、軽く触れただけで幸せが体中を駆け巡っていく。
目を開くとタマキも幸せそうに笑ってくれていた。
「もう一回」
要望にお応えしてもう一度唇を重ねる。
数秒後、ゆっくりと顔を離すとタマキが肩に顔を埋めた。
「俺達付き合ってるんだから、いつでもいい」
だから次はカゲミツから、と照れた声が聞こえてタマキの体を力いっぱい抱き締めた。
「じゃあもう一回してもいいか?」
「確認しなくてもいいかっ、」
今度はタマキが言葉を言い終える前に少し強引に唇を重ねた。
*
タマキはカゲミツの気持ちをわかった上でこの映画を選んだという小悪魔な裏設定←
映画の内容はごりごりの捏造です
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